失われつつある“設計力”を回復できる職人気質の3D CAD「Creo」:商用3D CAD製品カタログ
PTCのハイエンド3D CAD「Creo」。その前身である「Pro/ENGINEER」の最初のバージョンがリリースされた1988年から現在に至るまでの歴史と、“設計者が求める設計ツール”のあるべき姿を追求し続け、機能強化を果たしてきたCreoの特長を紹介する。また他の追随を許さない同社の「デジタルツイン」への取り組みに基づく、注目機能なども併せて取り上げる。
Creoとは?[歴史]
パラメトリックCADのパイオニアとして知られるPTCのハイエンド3D CAD「Creo」。Creoという名称になったのは2011年(発表は2010年)と比較的最近なので、Creoの前身である「Pro/ENGINEER」(通称:Pro/E)の方がしっくりとくる読者も多いだろう。
Pro/ENGINEERの最初のバージョンがリリースされたのは1988年のこと。ロシアの数学者であったSamuel Geisberg博士が生みの親だ。Geisberg氏はもともとComputervisionに在籍しており、CAD/CAMの開発に従事していた。Computervisionで「CADDS5」を開発した後、Geisberg氏は3次元による次世代の設計環境の在り方を追求。それを実現すべくComputervisionを去り、1985年にParametric Technology Corporation(PTC)を設立した(後に、PTCはComputervisionを買収している)。Pro/ENGINEERは、1980年代に登場し始めたハイエンド3D CADの中では後発に分類されるが、現存するハイエンド3D CADの1つとして、Creo(旧Pro/ENGINEER)はその地位を確立している。
当初、Geisberg氏はPro/ENGINEERを開発するに当たり、多くの設計者にヒアリングを行い、そこから得たアイデアを基に、機構設計のあるべき姿を具現化していったという。今でこそ、多くの3D CAD製品が同じ思想を取り入れているが、「パラメトリック(Parametric)」「フィーチャーベース(Feature-based)」「相互連携性(Associativity)」の考えを3D CAD環境で実現し、製品として市場投入したのはPTCが初である。ちなみに、Pro/ENGINEERの最初のユーザー企業は、農業/建設機械メーカー大手のJohn Deereであり、建設/鉱業機械メーカーのCaterpillarも古くからのユーザーとして名を連ねている。
1988年に最初のバージョンが世に送り出されたPro/ENGINEERは、およそ半年に1回のペースでバージョンアップを行い、1997年にVersion 20のリリースを迎える。その後、Creoへと名称が変わる2011年までの間に、Pro/ENGINEER 2000i/2000i2/2001、Pro/ENGINEER Wildfire 1〜5とバージョンアップを繰り返し、多くのユーザーを獲得していく。また、2005年以降になると企業買収も積極的に行っており、2007年のCoCreate Softwareの買収は大きな話題となった(CoCreateは現在、「Creo Elements/Direct」として展開されている)。そして2011年、Pro/ENGINEERはCreoと名前を変えて「Creo 1.0」をリリース。「Creo 4.0 M20」が最新バージョンとなっている(原稿執筆時点:2017年8月)。
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