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「XVL」は3D軽量ビュワーから製造業のデジタル変革基盤へと飛躍する超速解説 XVL(1/2 ページ)

3Dデータの超軽量ビュワーとして知られる「XVL」をご存じだろうか。2000年にラティス・テクノロジーが開発したこのデータフォーマットは、エンジニアリングビュワー市場のデファクトスタンダードとしての地位を確立しているが、デジタル変革が求められる今、その役割は大きく変わろうとしている。

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「XVL」とは何か? 徹底解説

 製造業の設計部門では、3D CADで設計し、CAEで解析、CAMや3Dプリンタで加工というように“3D”のデータ(情報)が幅広く利用されている。しかし、設計部門以外を見てみると、3Dのデータを有効活用できているとは言い難い。もし、設計の後工程にも3Dデータが流通したらどうだろうか。設計者の思いの詰まった3Dデータを後工程へストレートに渡し、やりとりできればモノづくりのコミュニケーションの質が飛躍的に高まるはずだ。そうなれば、問題の早期解決が可能となり、設計品質を高めることができる。

 2Dの図面ではこうはいかない。なぜなら、知識や経験に基づいて、設計者の思い描いた3Dの形状などを頭の中で復元する必要があるからだ。

 このように、3Dデータの流通には圧倒的なメリットがある。だが、それにもかかわらず、日本の製造業の主力である自動車や輸送機器、産業機械といったアセンブリ産業においてすら、後工程での3Dデータ活用はなかなか進んでいない。

 その背景には、

  • 3D CADのデータ量が巨大になり3Dデータの活用が運用に乗らない
  • 後工程で必要になる情報構造をCADでは表現できない
  • 設計の3Dデータが、設計のPLMシステムにとどまり、設計以降の後工程へと流れない

といった原因が考えられる。

 高いコストをかけて作り上げた設計部門の3Dデータは、企業にとって大きな資産である。これを全社規模で活用してデジタルなモノづくりプロセスを確立できれば、第4次産業革命を勝ち抜くための強力な武器になるはずだ。そして、今、3Dデータを全社で最大限活用するための手段として注目を集めているのが、本稿の主役「XVL(eXtensible Virtual world description Language)」である。

 本稿では、XVLとは何か、なぜ注目されているのか、そして来るべき未来にどのような貢献ができるのかについて、3Dデータを軽量化することで全社における3D活用を目指す“Casual3D”、CADでは不可能なシステム検証を実現する“CAD+1”、設計の3Dデータ資産を全社で最大化する“XVLパイプライン”という3D活用のキーワードとともに解説する。

XVLとは?

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3Dデータの大衆化“Casual3D”

 3D CADで複雑な製品全体を設計すると、データ容量が増大し、メモリも大量に使用するため、高性能なPCですらレスポンスが遅くなり、実用性が大きく低下する。また一般的に3D CADは高価であり、操作も難しい。こういった制約から3D活用のメリットを享受できるのは、設計部門を中心としたわずか5〜10%程度の限られた人たちだけであった。

 このような課題を解決するため、3Dデータの大衆化を目指し開発されたのがXVLである。XVLとは、CADの3Dデータを変換して生成される超軽量の3Dデータフォーマットのことで、2000年にラティス・テクノロジーが生み出した独自ファイル形式である。

 軽量かつメモリ使用量を抑えた構造を持つXVLは、製造業で広く採用されてきた。さらに、後述する“CAD+1”のソリューション群の登場により、設計に加え、製造/組み立て部門、販売準備、サービス部門といった後工程の各部門において、簡単、安価に3Dデータを活用できるという“Casual3D”の環境が実現。現在XVLは、エンジニアリングビュワー市場で60%を超えるシェアを占め、デファクトスタンダードとなっている。

XVLで実現する“Casual3D”の世界
図1 XVLで実現する“Casual3D”の世界

あらゆるモノづくり情報をXVLの中で表現した“CAD+1”

 図面や紙帳票で仕事をする環境にあった後工程ユーザーに、軽量3Dデータ形式のXVLが行き渡ることにより、イメージや意欲が刺激され、「XVLでこういうことはできないか?」という相談や要望、アイデアが日々上がってくるようになった。ラティス・テクノロジーは、こうしたユーザー要望に応える形で3Dモデルに加えて、モノづくりに密接にかかわってくる組み立て単位や組み立て順序、エレキ、点群、機構などのデータと、XVLで表現することを可能にした。

 また、主要メカCADに加え、エレキCAD、建築系のBIMなどからの変換機能を提供することで、XVLは業界横断フォーマットとして活用されるようになった。さらに、より高い価値を提供するために、CADでは実現できなかった課題の数々を解決するソリューション群“CAD+1”を続々と市場に送り出してきた。

あらゆるモノづくり情報をXVLの中に表現する“CAD+1”
図2 あらゆるモノづくり情報をXVLの中に表現する“CAD+1”

XVLで実現する生産技術のための3D価値――“製造指示作成ソリューション”

 日本の製造現場は、これまで多くの熟練作業員に支えられてきた。しかし、少子高齢化が進む中では、経験の少ない若手やパート労働者でも簡単に組み立てができるよう的確に指示を出すことが重要になってくる。海外工場での生産においては、知識や経験に加え、言語の違いという壁も存在する。これらのギャップを埋めるためにXVLでの指示書が幅広く利用されている。

 “CAD+1”のソリューションの中で、生産技術で採用が進むのが製造指示書作成ソリューションである。3D CADの構成情報を基に、組み立て単位、組み立て順序の情報をXVLに持たせて、そこから3Dの形状を付加した製造指示書を半自動で生成するものである。

 現場で必要とされる製造指示書の形や見せ方は、製品の作り方に依存してさまざまである。年間の生産台数が限られる製品を作る場合には、作業者の思い込みで、誤った手順で作らないようにするために、手順をアニメーションで見せ、かつその手順を確認したことをチェックする仕組みも併せて作り込まれることが多い。軽量なXVLだからこそ、指示書内で3Dのアニメーションを見せることが可能なのだ。

 ある部品を上下回転させて、本体の下方向から取り付け、ねじ止めをするというような指示をしようとすると、多くの言葉を駆使して説明する必要がある。一方、3Dのアニメーションでは、取り付けの方向などはアニメーションを見せることで理解させ、簡単な指示だけで済むようになる。作業指示書が簡潔になり、初心者や外国人にも正確に伝わる。これはXVLが引き出した3Dの真価といえる。

XVL製造指示書作成ソリューション
図3 XVL製造指示書作成ソリューション

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