ソフトウェアテストの未来(前編)――テスト技術者の将来と教育:IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト(10)(3/4 ページ)
IoTやAIが一般化する未来においても、ソフトウェアテストは険しい道のりを歩むことになるのだろうか。まずはテスト技術者に焦点を当て、その生きる道と道しるべである教育について見ていきたい。
階層別教育は面倒で怠惰
テスト技術者の教育は他のエンジニアと同様、初級教育は座学でも構わない。もちろん、演習があった方がいいに決まっているし、それが仕事に密接に関係したものであれば、なおさら優れている。講師も現場部門の技術者でなくてもいい。いや、現場部門でない方がいい。テストの初級を真面目に教育することが目的であり、講師には広範な知識と経験、そして分かりやすい教え方が必要であり、恐らく、開発現場の人間はこれに不向きだ。
問題は中級以上の教育である。教育でテスト技術者を中級以上にレベルアップさせることができるかという根本的な問題もあるが、それをあえて無視して、中級レベルの教育を考える。
中級になると、どうしてもテスト対象のドメインに特化した内容にならざるを得ない。絵に描いた餅(教科書のサンプルとして出されたドメイン)ではなく、実務でテスト対象にしているドメインが必要である。内容は実際の開発現場を題材にするのが望ましい。それができないときは、ドメインに近い近い演習を一定のコストを掛けて用意する。
ドメインに特化した教育では、講師はやはり現場部門またはその経験者が必要である。テストに関する広範な知識は既に初級コースで身につけているので、講師に広範な知識はなくてもいい。それよりも何よりもドメインに特化したテストの経験とそれを抽象化して教える能力が必要である。このように書くと簡単に見えてしまうが、実際には非常に困難である。
このような講師が各ドメインで漏れなく用意できることはまずなく、近接のドメインから講師を招くことになる。IoTやAI、ビッグデータといった要素を勘案すると、もともとのドメインに属するメンバーやテスト技術者は少ない。これはさらに問題になるだろう。
上級のテスト技術者はもはや教育では育成できないかもしれない。少なくとも座学やOJTなどといった一般的な教育課程では無理であろう。受講者自らが講師にヒアリングしたり、技を盗むしかない。またベースとなるスキルや心意気も必要となり、運とタイミングすらも求められることを付け加えておく。
中級者以上に向けたドメイン別、階層別教育は必要であるが、その実施にコストはかさみ、実施できるコースは限られるとなれば、どうしても教育そのものが面倒になってしまう。また面倒なことが多いので怠惰になる。しかしこれを実施しないと家元制度のままであり世界は破綻する。こうならないために、階層別教育は面倒がらずに実施するべきである。
とあるテスト現場より(3)
A:「教育はもっとスパルタで、テスト技術者養成ギプスを付けて、もっと体と精神に刷り込むものかと」
B:「その発想はどこから来たんだ。テストは科学的に学ぶものだ」
A:「え、先輩がいつもテストは根性でやるんだって言ってるじゃないですか」
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