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フォークランド島を爆撃せよ! ――大西洋を横断した壮大な「バケツ・リレー」組み込みエンジニアの現場力養成演習ドリル(20)(1/4 ページ)

今回は、パズルをもとに、1982年に起きたフォークランド島紛争で英国が実際に直面した「難題」の解決策を探ります。組み込み系エンジニアは日々、処理方式でいろいろ悩んでいます。今回の問題が、「解決のヒント」になれば幸いです。

» 2019年09月27日 10時15分 公開

はじめに

 筆者はパズルが大好きで、実は、光文社が出版していた『頭の体操』の第16集から23集までに掲載されている問題の3分の1を作っていました。

 パズルのような状況は、現実ではなかなか起きませんが、1982年、アルゼンチンと英国が争ったフォークランド島紛争では、パズル以上に複雑な状況が出現しました。今回は、パズルをもとに、フォークランド島紛争で英国が実際に直面した「難題」の解決策を探ります。組み込み系エンジニアは日々、処理方式でいろいろ悩んでいます。今回の問題が、「解決のヒント」になれば幸いです。

「鉄の女」、サッチャー首相の決断

 1982年は、日本では東北新幹線と上越新幹線が開業し、映画、『E.T.』『セーラー服と機関銃』が話題になった年。同年、アルゼンチンと英国の間で「フォークランド紛争」(Falklands Conflict)が勃発しました。当時、大きなニュースになったので、覚えている方も多いでしょう。

 アルゼンチンから500km(鹿児島市から那覇市までが650km超)の大西洋沖にある英領フォークランド諸島は、昔から両国間で領土問題がくすぶっていました。1982年4月2日、ついに、アルゼンチン軍が同諸島への侵攻を強行します。

 フォークランド諸島への侵攻命令を下したのが、前年の12月にアルゼンチンの大統領に就任したばかりのレオポルド・ガルチェリ(1926年7月15日〜2003年1月12日)。同大統領はアルゼンチン陸軍司令官も兼任しており、司令官の退任は翌年(1983年)に迫っていました。任期中に大きな手柄を立てて国民の支持を集め、軍事政権の基盤を固めたいとの思惑に背中を押された「フォークランド島派兵」は、「勇み足」になりました。

 一方、当時の英国の首相は、すご腕の「鉄の女(Iron Lady)」、マーガレット・サッチャー首相(1925年10月13日〜2013年4月8日)。米国のレーガン大統領とともに、世界を代表する超タカ派のサッチャーは、もちろん、「売られたケンカ」を力いっぱい買いました。

 英国は、豪華客船、クイーン・エリザベス2世号を輸送船に仕立てたり、原子力潜水艦、コンカラーが、アルゼンチン海軍の巡洋艦、ヘネラル・ベルグラードを撃沈したりしました。一方、アルゼンチン側は、空軍保有のフランス製攻撃機、シュペルエタンダールに搭載した空対艦ミサイル、エグゾセ(フランス語で「飛び魚」の意味)で、英巡洋艦、シェフィールドを撃沈するなど、互いに軍事行動を本格化しました。

 第二次世界大戦以降、電子機器を搭載した「組み込み系」の近代兵器が、初めて実戦で使用されたのが、この「フォークランド紛争」です。納入した製品が、「ずっと使わないまま」なのは、防災関係と国防系だけでしょう。なので、国防産業系の各社は、この紛争で「稀少で貴重なデータ」が収集できたと思います。

パズル「砂漠の横断」

 英国軍は、フォークランド諸島にあるスタンレー空港を爆撃することになりました(「爆撃」は、英語で「bombing campaign」と言います。日本では、「キャンペーン」は歌手が新曲の宣伝で全国を回ることを意味するので、同じ言葉でも、日英で大きなギャップがありますね)。スタンレー空港を空爆できれば、アルゼンチン空軍のミラージュ戦闘機などが発進できず、制空権で一挙に英国が有利になります。同時に、アルゼンチンに「本土を空襲されるかもしれない」との疑心暗鬼を抱かせ、本土防衛に戦力を割かねばならない状況を作り出します。

 英国は、フォークランド島の空爆を「ブラック・バック作戦(Operation Black Buck:ブラック・バックはインドに生息する小型の牛)」と名付けました。この作戦には、「大英帝国の威信」がかかっています。この作戦には、「超長距離爆撃」ならではの大きな障壁がありました。超長距離空爆作戦のアルゴリズムを考える前に、ウォーミングアップとして、以下の「砂漠の横断」パズルを考えてください。

問題:砂漠の横断パズル(制限時間30分)

徒歩で横断するのに6日かかる砂漠があります。ある探検家がポーターを雇い、横断しようとしました。探検家、ポーターとも、1人で4日分の食料を運べます。探検家は、どのように砂漠を横断すればいいでしょうか? 遭難者を出してはなりません。

解答

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