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» 2019年08月20日 10時00分 公開

組み込みエンジニアの現場力養成演習ドリル(19):カンニングの防止策 〜 大学の後期試験で得た経験を伝授 (1/3)

今回は、筆者の経験をもとに、「いかにしてカンニングを防止するか?」という課題に対する「ソリューション」を取り上げます。

[山浦恒央 東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士),TechFactory]

はじめに

 学生にとって、テストさえなければ、人生はバラ色ですね。学生には、年に2回の前期試験と後期試験は大きな試練です。大学の教員にとっても、問題を作り、採点するには、大きなエネルギーが必要になります。その上、キチンと「カンニング対策」をしなければなりません。

 今回は、筆者の経験をもとに、「いかにしてカンニングを防止するか?」という課題に対する「ソリューション」を取り上げます。

全15回の授業「オペレーティング・システム基礎1」

画像はイメージです

 筆者がまだプログラマーだったころ、非常勤講師として、ある大学の「オペレーティング・システム基礎1」という授業を担当しました。情報処理系の学部3年生が対象で、全15回の半期の授業です。受講する学生は約80人。取り上げるトピックスは、「システム資源とOSの概念」「ファイル管理」「マルチ・プログラミング」「プロセス制御」「仮想記憶」「セキュリティ」「並列処理とプロセス間通信」「リアルタイムOS」「ウィルスの基本」でした。

 授業では毎回、プレゼンテーションスライドを30〜40枚作り、学生に配布していました。なので、半期で配布したスライド総数は500枚を超え、ちょっとした書籍に匹敵する量になりました。学生には、「スライドの著作権は私にあるが、スライドは自由に改変して使ってよい」と、「既存物の再利用」を奨励しました。教員の中には、「資料を配布すると学生がノートを取らず、勉強しなくなる」と考えて板書だけの方が多かったのですが、筆者は、「エンジニア向けの有料技術講座」と同じ方針で臨みました。

 有料技術講座と異なるのは、学期末テストがあることです。どんなテストにしようか、いろいろ考え、以下を重視しました。

  • テストは、単に理解力や技術力を評価するだけではない。テスト勉強を通じて、OSを体系的に整理し、理解してほしい。
  • カンニングは絶対にさせない。

 高品質のソフトウェアを廉価で早く開発する方法が「再利用」です。学生には常々、「世の中に既に存在するものならば、イチから自分で作らず、再利用しよう。ただし、著作権などの権利はきちんとクリアすること」と言っています。ある意味、カンニングは、「究極の再利用」です。全くリソースを使わず、最も効率よく、「高品質の製品」を作れます。この「最悪の再利用」は絶対に阻止しようと思いました。

事前公開方式

 カンニングは絶対にさせたくありませんが、80人の学生に1対1の口頭試問を実施するのは時間がかかります。そこで、「カンニングする必要がないテストにする」と発想を換えました。また、「カンニングできる、できない」以前の課題として、「OSをしっかり理解してほしい」との思いがあり、事前に問題を公開する方式にしました。

 15回の授業で取り上げたトピックスの代表的な概念、技術、考え方を問う例題を12問作成し、テストの2週間前に全て公表しました(本記事末に添付資料として例題の実物を掲載しました)。学生には、実際のテストでは、この中から、一言一句変えず、全く同じものを5、6問出題する旨も伝えました。この方式なら、カンニングする必要はありません。

 例題の内容は、少し難しいように感じるでしょうが、どのトピックスも、授業でガッツリ学習していることです。ちゃんと授業を聞いていれば、簡単に正解できます。また、この12問全部にキチンと答えられれば、OSの基本を理解していると言えます。

 90%の学生は、友人と一緒に12問の模範解答を作るでしょう。教えてもらったり、教えたりする過程で、OSへの理解が深まります。これが筆者の狙いですが、問題は、残りの10%の学生で、「カンニングペーパーを12枚作ればいい」と思っているはずです。そんな不心得者も、「事前公開方式」では、実質的にカンニングができないのです。下記の問題で挙げた状況を考慮し、なぜ、カンニングできないかを「ソリューション」として考えてください。

問題【制限時間30分】

 上記の「例題の事前公開」方式を採用しながら、どのようにしてカンニングを防止できるか考えよ。なお、テストを実施する条件は以下の通り。

  1. 試験会場は200人程度収容できる大教室で、約80人が試験を受ける。
  2. 学生は任意の席に座ってよいが、隣とは1つ以上、席を空ける。
  3. 机の上に、書き込みはないことを事前に確認している。
  4. 机の上に、学生証、鉛筆、消しゴム、時計以外は置けない。
  5. 全ての私物はカバンに入れ、引き出しにも、何も入れてはならない。
  6. 大学院生3人が、試験監督を補助。
  7. 試験時間は60分だが、20分経過したら、退室してよい。
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