製造業におけるAI活用に注目が集まっています。ですが、「AI」は工作機械のように導入すれば結果が得られるというものではありません。今回はAIを製造業務で活用するためのノウハウとその注意点について学びます。
前回はデータ駆動社会における「データ分析の基礎知識」をテーマに、製造業に従事する全ての担当者が知っておくべきデータ分析の基礎について言及しました。具体的な分析手法としてはExcelとPython、それに機械学習プラットフォームについて説明しましたが、今回はその機械学習を含むAIの「活用方法と落とし穴」について、解説します。
「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」という言葉は既に広く使われていますが、AIに機械学習、深層学習(ディープラーニング)という言葉は近接領域にあるため、整理されずに使われることもあるようです。AIと機械学習、それに深層学習の関係を概念的に図式化すると以下のようになります。
そもそも「AI」という言葉は昨今急に登場したわけではなく、1950年代から使われています。1960年代と1980年にそれぞれブームと呼べる盛り上がりを見せましたが実用化には至りませんでした。そして現在、第3次AIブームと呼べる今までにない大きな波が来ています。
この第3次ブームの大きな要因が深層学習です。この深層学習は、ニューラルネットワークを複数層重ねることで実現しています。このブームは実用化の段階に入り、既にブームでは無いとも言えます。
3度目のブームを引き起こし、実用化の兆しも見せてるAIをリードする要点である深層学習は何がスゴいのでしょうか。
深層学習が一般化する前、機械学習で精度を高めるためには、人間が特徴となるパラメータ(一般に特徴量と表現)を設定する必要がありました。しかし、深層学習では自らが特徴となるべくパラメータ(特徴量)を見つけ出します。
深層学習による画像認識として有名な「Googleの猫」においては、人間が事前に猫の特徴をコンピュータに教えることなく(目、鼻、口、耳などの猫が猫であると認識される特徴をパラメータとして設定せず)、コンピュータが膨大な画像の中から猫の画像を抽出することに成功しています。この結果は、「AIが目を持つ」ことの可能性を示しました。
「目を持つ」ということはどういうことでしょうか? 生物学の発展においても、「目」を持つことで大きな変革が発生したといわれています。つまり、「視覚で認識して判断する」というこれまで人間でしか難しいと考えられていた対応が、AIでも行える可能性を示したのです。
製造現場の改善においても、この「目」を持つことで可能な分析は下記の様に多数あります。
AIという言葉の響きから、あたかも人間のようなロボットを想像する人もいるでしょう。しかし、現時点において、そのようなロボットの頭脳となるAIは存在せず、もし可能になるにしてもかなり未来になるでしょう。現段階においては、AIや深層学習を活用する際には、下記について「人」が実施しないといけません。
まず、(1)と(2)に関連する内容を下の表にまとめました(3と4については次の項でお話します)。
用途 | 内容 | 主な手法 | 活用例 |
---|---|---|---|
次元圧縮 | データ次元を圧縮(教師無し) | 主成分分析、特異値分解、潜在的ディリクレ配分法 | 顔認証、商品類似性可視化 |
クラスタリング | データのグループ化(教師無し) | K平均法、混合正規分布モデル、群平均法 | 購買傾向分類、データ異常アラート |
回帰 | 数値を予測(教師有り) | 線形回帰、べイズ線形回帰、回帰木 | 販売予測、機械の故障予知 |
クラス分類 | クラスの割り当て(教師有り) | ロジスティック回帰、SVM、ニューラルネットワーク、決定木(分類木)、ベイズ推定 | 案内状送付、有望客判断、迷惑メール判定、クレジットカード不正利用 |
ディープラーニング | 文字認識、画像認識、音声認識 | ||
上記の中で、クラスタリングとクラス分類に関しては、前回に確認問題を出題しています。教師有り学習と教師無し学習を簡単に説明すると、前者は結果を教える(ラベル付けを実施する)ことで予測や分類を実施することです。例に出した「Googleの猫」における画像認識は、「これは猫」「これは猫では無い」ということを教えることで学習する教師有り学習を利用しています。
また、その他にも重要な手法として下記の方法があります。
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