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世界最高のIQを持つ女性 vs 数学者軍団組み込みエンジニアの現場力養成ドリル(5)(1/2 ページ)

問題を考える上で感覚(直感)の役目も大きなものですが、感覚だけに頼ると論理的な結果が見えにくくなることがあります。有名な問題を例に、組み込みエンジニアとしてどう問題に取り組むべきか、考えてみましょう。

» 2018年06月04日 09時00分 公開

はじめに

 これまで、長編問題が続いたので、今回は、「ひとやすみ」的な軽い問題を解いていただきます。今回は、30年前のアメリカで実際に起きた「世界最高のIQを持つ女性と数学・統計学者軍団の戦い」を取り上げます。

今回の問題の背景

 アメリカの新聞の1つとして、毎週日曜日に発行されている「Parade」紙があります(週刊誌風ですが、広告が満載のいわゆるサンデー・ペーパーです)。初発行は1941年。読者はアメリカ全土に3200万人もいるそうです。日本で最大の発行部数を持つ新聞は読売新聞で、2018年4月時点の発行部数は約847万部です。週刊と日刊の違いはありますが、「Parade」紙の影響力は絶大といえます。

 Parade紙の名物コラムが1986年から連載が始まった「Ask Marilyn」で、日本語に訳すと『マリリンに聞いてみよう』でしょう。これは「世界で最も高いIQの持ち主」としてギネスブックに載ったマリリン・ボス・サヴァント(Marilyn vos Savant)さんが、読者からのあらゆる質問に答えるコラムです。ギネスブックには1986年から1989年まで、「世界最高のIQの持ち主」として彼女の名前が載りました。ただし、1990年以降、ギネスブックは「IQ値は信頼性が低い」として、IQ記録は取り上げていません。

 美貌と頭脳を兼ね備えたマリリンを困らせようと(姓の「savant」が「学者」を意味する単語であることも関係しているかもです)、人生相談から、政治経済、物理学、読者が作った難問パズル、地球温暖化への見解まで、読者はありとあらゆる質問を送りました。その中からマリリンは毎週1つを取り上げて、鮮やかに答えるのです。

 1990年9月9日号で、読者から「テレビのゲーム・ショー『Let's Make A Deal』で、3つのドアの後ろにある高級車を選ぶ場合、どうすれば高級車が当たる確率を大きくできるか?」との質問を取り上げました。多分、読者は「1+1がなぜ2になるのか?」みたいな、「常識的ゆえに難解な問題」だと思い、マリリンを困らせようと思ったのでしょう。

 『Let's Make A Deal』は、1964年から始まり、今でも続く人気テレビ番組で、出場者が簡単なゲームをして、うまくいけば高級車や海外旅行をプレゼントしてもらえる趣向の古典的なショーです。その中の有名なゲームとして、「3つのドアと高級車」があります。

photophoto ドアの向こうは高級車かヤギか(写真はイメージです)

 出場者の前にはドアが3枚あり、1つには高級車が、残りの2つにはヤギが隠れています。挑戦者はドアを1枚選び、そこに高級車があれば、それをもらえます。トリッキーなのは、挑戦者が1枚選んで開ける前に、司会者のモンティ・ホールが、ヤギのいる別のドアを開けてみせ、「ここにはヤギがいる。今なら、もう1枚のドアに選び直してもよい」と言うことです。

問題編(制限時間30分)

 さて、この「3枚のドア」で、高級車をもらえる確率を最大にするには、挑戦者は最初に選んだドアに固執すべきか、替えるべきでしょうか?

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