デジタルツインは、次世代の製品を設計する上でも重要な役割を担います。
現在、市場に出回っている製品の中にもセンサーが組み込まれ、その情報がネットワークなどを介して収集されているケースが多く見られます。いわゆるこうしたビッグデータを活用することで、実際にユーザー(顧客)がどのように製品を使用しているのかを、実データを用いて検証できます。
例えば、設計時に想定していた荷重が、実際にはそう大きくはなく、過剰設計だったことが分かるかもしれません。また逆に、構造をより強化することで、顧客ニーズにマッチした仕様にできるかもしれません。しかも試作品によるテストのように、限られた期間の、限られた状況のデータとは異なり、ありとあらゆる状況を繰り返し解析することで、品質を上げていくことができるのです。
CAD上にあるデジタル製品に、センサーという属性を持たせることができれば、新規製品に搭載するセンサーの最適化を行うことが可能です。製品の実際の振る舞いをデジタルツインで再現し、今後搭載されるであろう部分にセンサーを取り付けます。このセンサーを活用して、デジタルツインの振る舞いからセンサーで読み取れるデータを取得します。そして、そのデータが必要かどうかの検討を繰り返し行うことで、高価なセンサーの数を減らすなどの最適化が図れます。
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また、「バーチャルセンサー」という考え方もあります。このバーチャルセンサーとは、実際の製品には存在せず、CAD上でのみ存在するセンサーのことで、このセンサーで得たデータを実際のセンサーと同じようにIoTプラットフォームに送ることができます。
例えば、実際の製品の熱源A部には温度センサーがありますが、性能上に影響するであろうB部の温度センサーは実際の製品には存在しません。そのA部の温度情報をデジタルツインにて伝熱解析を行うことで、B部の温度を把握できます。理論値ではありますが、実際にセンサーが付いていない部分についても状況を把握することが可能です。
バーチャルセンサーで得た情報をそのままIoTプラットフォームに返します。そうすると、IoTプラットフォームでは、デジタルツインによって行ったデジタル上での解析データ、試作品による実験データ、ユーザーが実際に使用した際のデータなど、あらゆるデータを一元的に管理してくれます。万一、市場で問題があった場合は、そのセンサーデータからCADデータを特定することが可能です。そして、そのデータはデジタル上で解析した際の数値や実験データとひも付けて閲覧できるデータベースとなり、これまで別々に管理され、参照が困難だった各種解析データを連携させることができます。
今回は、3Dジオメトリがある場合の設計改善について紹介してきましたが、1Dシミュレーションの世界に対しても、同じように効果があります。何度も繰り返し計算するような場合、IoTのデータを利用することで、さらに精度を高めることができます。
以上、設計におけるデジタルツインの活用について触れてきました。想定した値ではなく、実データを使うことでデータ駆動型設計に移行でき、ムダを省き、設計効率を上げることができます。さらに、あらゆる解析データをIoTプラットフォームで一元管理することが可能で、将来的にはこのプラットフォームにAIが活用され、さらにIoTの設計活用の幅が広がると期待されます。
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