サイバートラスト
90億台の産業機器が「IoT機器」になる日、安全はどう保つ
情報通信白書によれば、2021年には94億台の産業機器が「IoT機器」になっている。そのとき、安全性はどのように確保されるべきなのだろうか。サイバートラストの講演より、機器製造側がとれる手段について考える。
インターネットに接続する機能を持った機器、いわゆる「IoT機器」の増加はとどまることなく続いており、航空宇宙や自動車、医療機器、そして産業機器もIoT機器としての側面を持つものが増えている。総務省の情報通信白書(平成29年度版)によれば、全世界のIoT機器は2021年に350億台へと達し、産業機器もその内の94.7億台を占めると予想されている。
この増加と歩調を合わせるように表面化しているのが、安全性確保の問題だ。2016年にはマルウェア「Mirai」によるDDoS攻撃が発生。日産「リーフ」の脆弱性が明らかになった。そして2017年にはランサムウェア「WannaCry」が自動車メーカーの生産システムをダウンさせ、安全計装システムのプログラムを改ざんするマルウェア「HatMan」も発見された。
IoT機器は「つながる」ことのメリットを享受するために開発製造されるわけであるが、つながることが複雑性を内包することにもつながってしまい、安全性確保が難しくなっている。この安全性を確保するため、機器開発・製造側としてはどのよう手法をとれるのだろうか。
IoT機器が直面する2つの問題
フジサンケイビジネスアイ主催「IoT時代の経営者向けサイバーセキュリティー対策」(2018年3月6日開催)にて、サイバートラストが「エンドポイントから考えるIoTサイバーセキュリティ対策」と題した講演より、機器製造側がとり得る手段について紹介する。
演壇に立ったサイバートラストの小林慎氏(IoT事業部 アシスタントマネージャー)は、現在のIoT機器が直面している問題として、「アクセス権設定の不足」「脆弱性の放置」の2つを指摘する。いずれも利用者と開発側のいずれかだけに責を負うものではないが、事象としては両者共に存在しており、結果としてMiraiのようなマルウェアによる「IoT機器のBot化」を引き起こしてしまったと分析する。
前者のアクセス権の不備という意味ではネットワーク対応監視カメラの不正アクセス被害、ホテルに設置されたPOSの脆弱性を利用した乗っ取りなどが既に事例として存在している。後者については三菱「アウトランダー」のモバイルアプリに脆弱性が存在し、盗難警報を解除するなどの操作が可能であったことが明らかになっている。つまり、監視カメラやPOS、そして自動車などがIoT機器としての性格を持つようになり、その安全性低下が社会生活に大きな影響を及ぼすことになっているのだ。
もちろん、こうしたリスクに対処する動きもある。総務省では「IoTセキュリティ対策に関する取組方針ver1.0」を2017年4月にとりまとめた他、2017年夏にはIoT機器に関する脆弱性調査なども実施している。IoT機器の安全性確保に関するガイドラインはIPA/SECやJNSAなども作成・配布しており、より開発側に近い指針も示されている。
こうして公開された取り組み方針やガイドラインに目を通せば分かるが、IoT機器の場合はモノが監視カメラやPOS、自動車などさまざまなカタチを取ることもあって、PCであれば有効であった「アンチウイルスソフトを入れる」のような画一的かつ具体的な対応策は存在しない。
小林氏はIoT機器の特徴を「多」「長」「動」「開」「省」(多:大量に市場投入される、長:長時間稼働が前提、動:自動車など動くモノもある、開:オープンなネットワークを利用するため悪意ある者でも接近しやすい、省:システムリソースが限られた機器が多い)と分類し、どのような性質の機器であっても、開発から設計、生産、利用、破棄に至るまでを貫くセキュリティ環境が必要だとした。
そのセキュリティ環境として小林氏の紹介するのが、機器認証からライフサイクル管理までを提供する「Secure IoT Platform」である。現在のサイバートラストは組み込みLinuxなどを手掛けるミラクル・リナックスと、電子認証局事業を行うサイバートラストが2017年10月に合併した企業であり、このプラットフォームの構想も2017年10月に発表されている。
具体的には半導体への共通鍵書き込みに始まり、IoT機器の生産/出荷/運用/廃棄各段階での電子認証を提供することで、半導体製造から廃棄までの各レイヤーにおける、製品のライフサイクルを包括的にカバーする。鍵は通信の暗号化、証明書は機器証明を担っており、IoT機器に求められるトレーサビリティやメンテナンスを提供する他、プラットフォームとして提供とすることで「安全なIoT機器の低コスト化」も図るとしている。
Secure IoT Platformの発表時、サイバートラストの眞柄泰利氏(取締役 上級副社長)は「複合機や自動車といった領域での採用が検討されており、2018年の夏には何らかの形を見せることができる」と述べており、IoT化が進む産業機器や自動車の安全を保つプラットフォームとしての存在感発揮が期待されているといえる。
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