設計品質の向上、さらなる生産効率化など、設計・製造現場では常に厳しい要求が突き付けられている。そうした中、3D CADをはじめとしたツールの導入やより効果的な使い方を追求した組織としての取り組みも行われている。本連載では3D CAD/3Dデータ活用にフォーカスし、プロジェクト管理者がどのような視点で現場改革を推進していくべきか、そのヒントを提示する。連載第12回では、効率的なプロジェクトの進捗管理について取り上げる。
前回お届けした「何のために3D CADを導入するのか――あらためて、その目的を明確に」では、3D CAD導入プロジェクトにおける3D CAD選定フェーズでの留意点について紹介しました。この記事を読んだ方たちから、
といった反響がありました。
筆者の考えとしては、20年前と変わらないのではなく、“20年前よりも設計者の業務範囲は拡大しており、設計時間が削られている状況の中、要求技術はどんどん高度化している”のだと思います。
同時に、大手企業と中小企業の3D CAD推進の進捗(しんちょく)に乖離(かいり)が生じていると感じています。つい先日、元大手企業の開発部門に在籍していたことのある方が、こんなことを述べていました。「リーマンショックの際、開発部門での本業の傍ら、取引先中小企業の縮小や派遣社員の調整なども行っていましたが、中小企業の実態など知る由もなかった」――。
それも当然でしょう。「ヒト」「モノ」「カネ」が潤沢な大手企業に所属する人が、中小企業の実態を理解できるかというと無理があります。事実、中小企業の多くでは、3D CAD推進のような間接的な業務活動に対して、十分な資源の投入や支援を行うことはまれで、リーマンショック後はなおさら難しい状況でした。
また、3D CADを核とするPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)関連製品やその導入プロジェクトというものが、中小企業にとって負担となっていることと、そのプロジェクトがトップダウン(経営判断)で行われているか、ボトムアップで行われているかでも大きく違ってくるでしょう。
そしておそらく、会社の経営が苦しい時期でも、トップダウンで粛々と3D CAD推進という投資を継続し、その活動を通じて実力や知見を蓄積してきた企業の幾つかが、ここ最近の経済状況の回復によって、海底にいた潜水艦が一気に海面へと浮上するかのごとく、3D CAD推進の取り組みが大きな成果へとつながり、その存在感を強めているような気がします。
筆者も中小企業に所属していますが、われわれ中小企業が3D CAD推進のようなプロジェクトに取り組んでいくには、大手企業以上にさまざまな困難があります。しかし、中小企業の中にも「ダントツの技術力」「瞬時に動く組織力」を持つ企業もたくさんあります。「大手企業のように潤沢な資源がないから……」と悲観的にならず、こうした強みをぜひプロジェクトの推進に生かしてみてください。
ということで、今回は「プロジェクトの進捗管理」について取り上げていこうと思います。
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