製品投入サイクルの一角であるテストだが、企画や開発、量産に比べるとコストセンターと見なされることが多い。しかし、コストだと思われていた部分を見直すことで、製造業におけるモノづくりに大きなプラスをもたらす可能性がある。
製造業におけるモノづくりはこれまで、「企画、開発、テスト、量産」という一方通行である事が多かった。特に量産が開始されてからの仕様変更は大きな不利益に直結するため、各段階で入念に検討と検証を重ねられるのが常である。ただ、市場競争の速度は増す一方であり、加えてIoTやAI、ビッグデータといった不定型な要素に対応していくためには、製品投入サイクルの速度と柔軟性の向上で対応していく必要がある。
製品投入サイクルの一角であるテストだが、企画や開発、量産に比べるとバックオフィス的な原価部門、コストセンターと見なされることが多い。しかし、企業にとって以前はバックオフィス的存在だったIT部門が今や企業戦略に大きな価値を持つと認識されているよう、コストだと思われていた部分を見直すことで、製造業におけるモノづくりに大きなプラスをもたらす可能性がある。
計測やテストのツールを手掛けるNational Instruments(以下、NI)は計測/テストツールの傾向をまとめた年次レポート「The Automated Test Outlook」を発行しており、2017年度版である「Automated Test Outlook 2017」の発行に合わせ、NIの日本法人である日本ナショナルインスツルメンツが製造業における「テスト部門の資産化」について解説した。
製造業にとってTCO(Total Cost Owership:総所有コスト)の考え方はそう珍しいものではない。TCOは計画検討や開発ツール費用、開発用システムなどを含む「開発」、設備導入費用や組み立て費用、搬入搬出などを含む「導入」、それに人件費や保守管理、設備費などを含む「運用」のコストを合算したものであり、TCOを抑えることは売り上げを伸ばすことに匹敵する増収源となる。
では全ての製造業がそのTCOの考えを導入してキャッシュフローの改善を行っているかといえば、NOだろうというのが日本ナショナルインスツルメンツ(以下、日本NI)の久保法晴氏(APAC リージョナル マーケティング マネジャー テスト&RF担当)だ。
「半導体製造業のような設備投資が大きく大量生産を行う企業は(TCOの考え方を)導入していると思うが、少量多品種の業種ではあまり導入されていないように思える。ただ半導体や電子部品製造といっても、アナログ製品は多品種少量生産になりやすいのでTCOの導入は有効だろう」(久保氏)
TCOの考えを導入することが製造業の収益改善に有効としても、TCOはあくまでも考え方であって手段、方法ではない。そこでコストを抑えるための手段として日本NIは「テスト部門の資産化」が有効だと提案する。
久保氏は多くのIT企業がCIO(Chief Information Officer)やCTO(Chief Technology Officer)などの役職を設け、バックオフィスを全社における戦略部門と位置付けることが増えていると現状を解説し、この流れが製造業においても波及しつつあるとも述べ、「テスト部門の資産化」事例を紹介した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
豊富なホワイトペーパーの中から、製品・サービス導入の検討に役立つ技術情報や導入事例などを簡単に入手できます。