第四次産業革命は、今後の生産性革命を主導する鍵となるもので、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット、センサーなどの技術的ブレークスルー全般を指す概念となっている。これらは重要な技術基盤として位置付けられ、あらゆる産業における変革を促すテクノロジーとして展開されるものとなっている。
日本政府は、2016年6月2日に「日本再興戦略 2016」を閣議決定した。GDP600兆円を実現するために、(1)新たな「有望成長市場」の戦略的創出、(2)人口減少に伴う供給制約や人手不足を克服する「生産性革命」、(3)新たな産業構造を支える「人材強化」という3つの課題に向けて、さらなる改革に取り組むというものである。そして鍵になる施策として、「官民戦略プロジェクト10」が発表されている。
1−1:新たな有望成長市場の創出
(1)第四次産業革命(IoT・ビッグデータ・人工知能)
(2)世界最先端の健康立国へ
(3)環境・エネルギー制約の克服と投資拡大
(4)スポーツの成長産業化
1−2:ローカルアベノミクスの深化
(5)既存住宅流通・リフォーム市場の活性化
(6)サービス産業の生産性向上
(7)中堅・中小企業・小規模事業者の革新
(8)攻めの農林水産業の展開と輸出力の強化
(9)観光立国
1−3:国内消費マインドの喚起
(10)官民連携による消費マインドの喚起策
健康からスポーツ、住宅、中小企業支援、農林水産、観光などと幅広い分野で“再興”を目指す動きが示されているが、なかでも重要になるのが、筆頭に掲げられている「第四次産業革命」である。
第四次産業革命は、今後の生産性革命を主導する鍵となるもので、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット、センサーなどの技術的ブレークスルー全般を指す概念となっている。これらは重要な技術基盤として位置付けられ、あらゆる産業における変革を促すテクノロジーとして展開されるものとなっている。
ドイツのインダストリー4.0も第四次産業革命という位置付けで紹介されたが、こちらは工場の生産性革命を主眼にしていたのに対し、日本政府の打ち出す概念は、必ずしも工場に限定されたものではない。欧米に一歩遅れたからできたのだろうが、昨今の注目キーワードをたっぷりと盛り込み、より包括的な観点から、既存の社会システムや産業構造を大きく変革するもの全体を捉えた言葉にしているといえるだろう。
おそらくは、これほどまでにICTが産業変革の中核と位置付けられたことは過去なかったのではないだろうか。日本といえば「モノづくり」「おもてなしサービス」などが強み・特徴として語られることが多く、ITは不得手というイメージが強かった。しかし、今やICTを日本の中へと内面化していかねばならない時代に突入したのである。これからの主役は、モノづくり熟練者ではなく、ICT技術者、そういう時代に差し掛かっているといえるだろう。いや、熟練者のICT人材化が望まれているのかもしれない。
「日本再興戦略 2016」では次のような記述がある。
我が国は、第1幕のネット空間から生じる「バーチャルデータ」のプラットフォームでは出遅れた。しかしながら、第2幕の、健康情報、走行データ、工場設備の稼働データといった「リアルデータ」では、潜在的な優位性を有している。既存の企業や系列の枠を超えて、第2幕の「リアルデータ」でプラットフォームを獲得することを目指していく。
このリアルデータについては、実際、日本が優位性を発揮できる可能性があるゾーンとして期待されている。その理由は、エッジデバイス技術・ノウハウの存在だ。IoTとなれば、末端のデバイスからデータを取得し、それをクラウドへと集約するシステムイメージとなるが、実はそうではない。帯域の問題などから、クラウドへ送る前に、エッジ側である程度の処理を行うことになるだろうといわれており、これはエッジコンピューティングと呼ばれている。
IT側ではアメリカにほぼ支配されることになったが、デバイス側では主要部品は日本製ということも多い。そして、デバイス側で情報処理を行うとなれば、それはセンサーなどの近傍で行われることになろう。その仕組みを作るという点では、デバイス側の部品を手掛ける日本やドイツが有利といわれている。
それゆえ、IoT時代の到来は日本にとっても飛躍できる大きなチャンスなのである。それを信じて、第四次産業革命の行く末を見つめていきたいと思う。
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