エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄。記念すべき連載第1回は、沖縄工業高等専門学校出身の若きエンジニアが立ち上げた「スケルトニクス」の挑戦について取り上げる。
「沖縄モノづくり新時代」と題した連載企画を持ち掛けられたとき、まず頭に浮かんだのがスケルトニクスのことだった。
同社が開発した外骨格ロボット「スケルトニクス」が、人の動きを大きく拡大させながら動く姿には圧倒させられる。「ニコニコ超会議」への出演を皮切りに、「NHK紅白歌合戦」やTVコマーシャルへの出演協力、国内外の各種イベントへの参加など、一気に世間の注目を集めた。読者の皆さんも何らかのメディアで彼らの外骨格ロボットを見たことがあるのではないだろうか。
同社を創業したのは、沖縄県辺野古にある「沖縄工業高等専門学校」(沖縄高専)を卒業した白久レイエス樹氏ら3人(図1)。「製造業不毛の地」といわれる沖縄から生まれた、“沖縄発”そして“沖縄初”のロボットベンチャーの話題は、新連載の記念すべきスタートを飾るのにピッタリだと考えたのだ。
ただ、同社に取材を快諾してもらったものの、2016年2月上旬に設定した取材先に向かう足取りは重たかった。なぜなら、2016年1月に同社の公式Webサイトで「エグゾネクスプロジェクト終了のご報告」という発表があったからだ。
「エグゾネス」とは、スポーツができる運動能力や時速40kmでの動歩行、時速80kmでの高速移動を目指した重量級パワードスーツの開発名称である。「まるでアニメの世界ではないか!」「何て途方もないものを作ろうとしているのか……」と感じる方も多いだろうが、彼らは真剣そのものだった。時間、資金、この1年間のほぼ全てをエグゾネクスの開発に費やしてきたのだ。
まだ世の中にカケラすらも見えていない、極めて難易度の高いプロジェクトであることは間違いない。「当初目標としていたスペックには及ばず、力不足を感じさせられた」「プロジェクトの完全達成には至らない結果」といった文字が並ぶ発表文を眺めながら、燃え尽きてやしないかと勝手ながら思ってしまったのだ。
彼らの開発工場は、東京都西部の高尾にある。高尾駅からバスと徒歩で約20分、周辺には畑が広がる。この場所で、沖縄出身の若き技術者が世間をあっと驚かせるロボットやパワードスーツの開発に熱中していると誰が思うだろうか。
工場で迎えてくれた同社代表の白久氏から語られる言葉は、淡々としながらも、とても力強いものだった(図2)。エグゾネスという重量級パワードスーツの開発を終え、次に見据える未来は? 「パワードスーツが使えないことが分かった」と語る真意とは? 新生スケルトニクスの今とこれからについて伺った。
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