大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
TSMCは日本で何をしようとしているのか(4/4 ページ)
TSMCが日本に研究施設を置く理由は“材料”
さて、このSoICはまだ研究段階の技術であって、量産には至っていない。2018年のTSMC Technology Symposium 2018では、断面図を公開するとともに、4.8M CoWのBondのYieldが95%に達した(480万箇所の接続を行い、不良だったのは24万箇所だった)という数字が公開されているが、試作というか開発段階の数字としては優秀ながら、こんなに不良があるのでは冗長接続を行わないと怖くて使い物にならないわけで、もう一段開発を進める必要がある。
実は2020年11月にNikkeiAsiaが、このTSMCのSoICをAMDとGoogleが採用し、これを利用したチップが2022年に量産されると報じたが、ニュースソースの信頼性はともかくとして、まだ現状は信頼性試験をしている段階でしかない事を伺わせる。
といったあたりまでが、現状のTSMCの3D IC技術の概略である。さてここに日本が絡むのは何故か? というと、特にInterposerなどの材料で日本が大きなシェアを持っている事が関係してくる。例えば最近IC不足がいろいろ取りざたされている(自動車メーカーが必要な半導体をまるで手に入れられなくて困っている)という話があり、その主眼は先端プロセスラインが既に満杯になっているという事なのだが、これに加えてこうした先端プロセスを利用しているSoCのパッケージ材料に味の素のABFが使われており、ところがこのABFの供給がひっ迫しているために、ダイが作れてもそれを完成品にできないという事もその一因とされている。味の素以外にも結構多くの日本企業が、こうした先端部品向けの材料を提供しているのは周知の事実であり、3D ICの開発で他社(要するに後工程で強いAmkorとかASE、SPILなどに加え、以前からSilicon Interposerの提供を開始しているUMCなど)との差を広げるためには、材料メーカーと密接に協力を行う必要があり、そうした材料メーカーが多く日本に存在する。となれば日本に研究施設を置くのはごく自然な事である。
TSMCは、要するにこれまで後工程の作業とされていた複数チップの積層を、いわば前工程に持ち込もうという動きである。だからこの新設される研究施設には、当然小規模な前工程ラインが設けられることにはなると思う。当たり前の話で、材料メーカーから来たサンプルをいちいち台湾に送って試作するくらいなら研究施設は要らない。国内で直ちに試作を行い、その特性を調べたり試験を行ったり、というのであれば最小限のラインがあれば十分だし、186億円という金額もそうした設備を入れる事を考えればちょうど手頃だろう。ただここはあくまで量産はしない(し、できない)規模のものでしかない。長期的には、例えば国内の半導体製造装置の機材の評価なんかもこの研究施設の使命になるかもしれない(そこまで国内の半導体製造装置メーカーが残っていれば、だが)が、まずは3D IC向けの材料開発がメインだろうし、それ以上ではないだろう。
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