大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Aurora遅延に絡むTSMCのオレゴン進出/DRAMで苦悩するHuawei(3/5 ページ)
ここでキーになるのはIntelの7nmである。もともとIntelは2018年、180PFlopsの性能を持つ初代Auroraを納入予定だった。ところがここで利用する予定だったXeon Phi(コード名Kinghts Hill)が10nmプロセスの不調により開発中止になり、仕切り直しとして性能レンジを1PFlopsまで引き上げ、2021年納入にすらしたという経緯がある。何故Intelは一度失敗したにもかかわらずまた契約が取れたか? というと、Intelは現在アメリカで唯一、CPUの開発と製造を自社で行える、純米国産の企業という要素がある。
IBMとかAMDは、既に製造を外部に委託してしまっている。NVIDIAも同様で、現実問題として台湾TSMC(IBMは韓国Samsung)がチップの製造を担っている。ところが米国政府としては、純米国産のスーパーコンピュータでExa Flopsをどうしても実現したかったのだ。だからこそ、一度失敗したIntelと再び契約をした訳だ。ところがここに来て、その肝心の7nmの行方に黒雲が掛かっている。上で3段階の納入ステップになるとしたが、仮にIntelの7nmがさらに遅延したり(この可能性は十分ある)、製造できたとしてもTSMCの5nmに性能が及ばない(純粋な性能だけならまだしも、性能/消費電力比はこのところのIntelのプロセスを見ていると、かなり厳しい様に思われる)といった場合、第3段階に至らず第2段階までで完了してしまう可能性がある。これは米国政府にとって、いわばメンツを潰された事になりかねない。
ここで絡んでくるのが、TSMCがアリゾナ州にFabを建設するという話である。これはトランプ政権と台湾の距離を縮める、非常に政治的な展開ではあるのだが、これが実現すればTSMCの5nmで作られたチップを「実質アメリカ製」と強弁することは無理ではない。要するにメンツの問題であり、Auroraへの納入分は台湾で製造したとしても、その後のPonte Vecchio向けCompute Tileがオレゴン州のTSMC 5nm Fabで製造されることになれば辻褄はあわせられるからだ。
逆にいうと、こうした助けが必要なほどIntelは窮地に追い込まれていた、という事にもなる。実のところAuroraの稼働が2022年以降にSlipすると、まず2021年からORNL(米オークリッジ国立研究所)に納入を開始し、最大1.5 Exaflopsを実現するAMDのFrontierと思いっきり競合することになる。そして2022年にはLLNL(米ローレンス・リバモア国立研究所)に、やはりAMD製で2 Exaflopsの性能となるEl Capitanも導入される。Auroraは当然これらと性能を比較されるわけで、そうでなくても肩身が狭いところに来て、純米国産でありませんでした、となると立つ瀬がない。TSMCのオレゴン進出は、意外なところでIntelの助けとなりそうである。まぁIntelの7nmが立ち直れば、このあたりの問題はあっさり解決するのだが。
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