大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Microsoftに買収されたExpress Logicとは(1/2 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回は、2019年4月の業界動向の振り返りとして、Microsoftに買収されたExpress Logicの話を紹介する。
2019年4月18日、Expless LogicはMicrosoftに買収されたことを“高らかに”発表した※1。ちなみにMicrosoftのリリースはもうちょっと程度を抑えた、ごく一般的なものになっている。ちょっとこの辺りを踏まえてExpress Logicという会社を今月はご紹介したい。
※1 興奮のあまりか、リリース本文の日付が“2018年”4月18日になってるあたりはご愛きょう。
Express Logic(ロゴでは最初のEは小文字なのだが、文章では普通に大文字でスタートしているので、本稿もこれに倣う)は1996年、Bill(William)Lamie氏によってSan Diegoで創業された。そしてそのExpress Logicの最初の、かつ現在も中核の製品が「ThreadX」というRTOSである。
実はBill Lamie氏、もともとはNucleus RTX/Nucleus PLUSの作者として知られている。当初は1980年代末に契約でAm29000用のRTOSを書いたのを切っ掛けに、より使いやすいAPIを持つRTOSを設計し始めた結果として完成したのが1990年のNucleus RTXである。これを販売すべく、パートナーのNeil Henderson氏と創業したのがAccelerated Technologyである。このNucleus RTXは非常に多くのプラットフォームに移植されることになり、するとより多くの要求(特にネットワーク対応)が寄せられるようになった。これに対応すべく1993年にリリースされたのがNucleus PLUSである。こちらはNucleus RTXにもまして良く売れたが、Lamie氏からするとNucleus PLUSはいろいろ不満(過剰設計になっている部分が多すぎると考えていたらしい)があった。1995年、Henderson氏からAccelerated Technologyの買収提案を受け、Lamie氏は自身の持ち株を売却、Accelerated Technologyから離れる(その後Accelerated Technologyは2002年にMentor Graphicsに買収される)。
自由になったLamie氏は、全く新しいRTOSを新規に開発し始める。Nucleus PLUSの開発の際は、Nucleus RTXとの互換性などを考える必要があったが、今度はそうした問題もない。この新しいRTOSの開発のために立ち上げたのがExpress Logicで、1997年に彼の3つ目のRTOSであるThreadXが完成することになった。
以後、Express LogicとThreadXは着実にシェアを獲得してゆく。以下の数字は、折々のリリースなどに掲載された数字だから厳密なものではないが、Thread Xの出荷数は、
| 年 | 出荷数 |
|---|---|
| 2006年 | 3億デバイス |
| 2010年 | 7.5億デバイス |
| 2013年 | 15億デバイス |
| 2017年 | 62億デバイス |
とされている。もちろんこの間、Thread Xも進化していった。RTOSという性格上、コアは本当に最小限にとどめ、後は必要に応じてモジュール的に組み込めることになっており、実際Thread Xは最新バージョン(5.8)においてもSchedulerだけならFlash 2KB/SRAM 1KBで組み込み可能である。それでいて生成可能なThread/Message Queue/Semaphore/Mutex/Event Flag/Block Memory Pool/Timerなどが無制限(いや実際にはメモリ容量で制限されるが、OS側の制限はない)という豪華な仕様になっている。ちなみにThreadXそのものはSingle CPUであるが、マルチプロセッサ向けにThreadX SMPも用意されている(AMPの場合は、そもそもOSも別々に動くのが普通なので、通常のThread Xのままで利用可能)。これに加えるものとしてFileX(File Systemのサポート)、GUIX(GUIのサポート)、NetX(IPv4の対応)、NetX Duo(IPv4/v6のDual Stack)、USBX(USB Host/Device/OTGの対応)といったコンポーネントと、さらに開発環境としてGUIX Studio(GUIXの統合開発環境。自動的にCのソースコードを生成できる)およびTRACEX(Trace Tool)が用意されている。変わったところでは、これは国内のGRAPE Systemsによる提供であるが、ThreadX-μITRONなんてものまである。要するにThreadXの上にμITORN4.0のWrapperを被せたものだ。
機能安全が要求される分野向けのスペシャルパッケージも用意されている。TUV Off-the-shell CertificationとSGS-TUV SaarではIEC-61508/IEC-62304/ISO 26262/EN 50128に、そしてUL Off-the-shelf CertificationではUL 60730-1/CSA E60730-1/IEC 60730-1/UL 60335-1/IEC 60335-1にそれぞれ対応している。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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