RTOS/Linux共存の最前線(1)
RTOSとLinuxを同時に使う理由とそれぞれの課題(1/3 ページ)
組み込み機器に求められる要件は高度化/複雑化しており、チップ側もマルチやヘテロジニアス構成が一般化している。そうした環境下で注目されるのが、「RTOSとLinuxの共存」である。本連載では共存環境の開発に向けた注意点を紹介していく。
進化する組み込みシステム
AIや自動運転などが日々のニュースで言及されるようになって久しく、組み込み業界でも最近はエッジコンピューティングやIoT(Internet of Things)、Industry 4.0など、一昔前には見なかった用語が飛び交うようになっています。組み込みシステム向けの半導体についても、微細化やムーアの法則の限界がささやかれる中ではありますが、新しい要求に対応すべく進化を続けています。
下表はここ数年の間に発表された組み込み向けSoCですが、特にハイエンド向けのチップではSoC(System-On-Chip)化により複数機能がワンチップ化されるだけではなく、CPUもアプリケーション用/リアルタイム処理用と用途別にヘテロジニアスやマルチコアの構成で搭載されているなど、特定用途に向けた機能も搭載されつつあります。
組み込みシステムの開発トレンド
CPUが複雑化して組み込みチップの選択肢が増えていることにより、開発の現場はどのような影響を受けているのでしょうか。日本国内における、組み込みシステムの開発現場トレンドを見てみましょう。
情報処理推進機構(IPA)の資料「組込みソフトウェア開発 データ白書 2017」を見ると、開発ターゲットの組み込みシステムに占めるマルチプロセッサ/マルチコアCPUシステムは36%を占めています。その中でも、一部にヘテロジニアスマルチコアを含む「シングルチップマルチコア(非対称)」の6%は比較的大きな数値といえます。
RTOSの現状と課題
組み込みシステムにはさまざまなOSが使われますが、その中でRTOSは小さなマイコンからPC顔負けの汎用プロセッサまで、さまざまなシステムで動作できます。玩具から家電製品、FA(FactoryAutomation)機器やロボット、自動車、航空宇宙に至るまで幅広い分野で利用されており、近年ではIoTやM2M(Machine to Machine)、V2X(VxWorks 7ehicle to X:車車間/路車間通信、車とモノの通信)やADAS(先進運転支援システム)といった分野でも採用が増えつつあります。
自動運転やAI、エッジコンピューティング、5G通信によって処理するデータの量が増大する中、組み込み開発にも高速伝送・大容量・低遅延のシステムが要求されるようになっています。こうした背景もあり、RTOS(とくに国内ではμITRON)の需要はさらに高まると考えられます。
RTOSに求められるものとして「高信頼性」「リアルタイム性」などが挙げられます。ですが、その一方で、対応が求められている課題もあります。
セキュリティ
ARMのTrustZoneやMIPSのOmniShieldのようなハードウェアにひも付くセキュリティ技術が登場しています。ARMはセキュリティ用のファームウェア(Trusted Firmware)もプラットフォームとして提供しています。ですが、RTOSとしてこうしたセキュリティ技術への対応はあまり進んでいません。
機能安全
自動車の機能安全(ISO26262)が有名ですが、安全性が要求されるシステムでは産業機器向けの機能安全であるIEC61508をベースにした規格が分野ごとに存在し、分野によっては組み込みソフトウェアやOSでの対応が必要になってきています。
産業用イーサーネット
RTOSに産業用ネットワークのプロトコル(Ethernet/IP・EtherCAT・EthernetIPなど)を組み合わせ、リアルタイム性が保証されたネットワークの対応が求められています。今後は無線通信でもリアルタイム性が求められてくるかもしれません。
ヘテロコア対応
両方のチップにRTOSを利用したヘテロコアのシステムも増えており、課題になっています。同じOSを別のコアにのせたり、RTOS+ベアメタル(OSなし)の構成であったりケースはさまざまです。
仕様未公開のデバイスへの対応
RTOSだけでは解決できない問題として、ハイエンドのヘテロ・マルチコア構成プロセッサに搭載されているGPUやコーデックなどのデバイスを扱うケースが想定されます。これらのデバイスを扱うためのドライバは通常Linuxのみに提供されており、特別なNDAを結ばない限りは詳細な仕様が入手できないことが一般的です。
例えばRTOSでARMのMali GPUの機能を使ってグラフィックを扱うシステムや、OpenCLを用いてGPGPUで処理したいという要望があっても、肝心のGPUの仕様書が一般には公開されていない上にARMのサイトにもLinux/Android用のドライバしか用意されていないためにハードルが跳ね上がります。また、移植するにしても、各ライセンスの取り扱いに注意する必要があります。
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RTOS/Linux共存の最前線
組み込み機器に求められる用件は高度化/複雑化しており、チップ側もマルチやヘテロジニアス構成が一般化している。そうした環境下で注目されるのが、「RTOSとLinuxの共存」である。本連載では共存環境の開発に向けた注意点を紹介していく。
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