アンシスとの提携、フラスタム買収の真意
PTCはなぜ設計プロセスにおけるシミュレーション技術の活用に注力するのか(1/3 ページ)
ANSYSとの業務提携の発表に続き、ジェネレーティブデザイン技術を有するFrustumの買収を発表したPTCは、ハイエンド3D CAD「Creo」による設計プロセスの変革を加速させようとしている。提携、買収といった一連の流れが意味するものとは何か。
ANSYSとの業務提携、Frustumの買収で「Creo」はどう変わるのか?
構想(コンセプト)や設計といったモノづくりプロセスの上流において、シミュレーション技術を活用し、設計品質を向上させ、試作回数の低減や後工程からの手戻りを削減するといったアプローチの重要性は以前から叫ばれてきた。
しかし、設計段階においてCAEツールを活用したシミュレーションを実行しようとすると、CADで設計したモデルを解析向けに簡略化(穴埋めやフィレットの除去など)し、メッシュを切ってから実行する必要があるため、解析のためのデータ変換に大きな手間がかかっていた。さらに、大規模モデルなどを解析にかけると、結果を得るまでに膨大な時間を要するため、“解析結果を基にした設計の見直し”という反復作業がしづらいという状況がネックとなり、構想および設計段階におけるシミュレーションの活用は思うように進んでいないのが実情だった。
こうした状況に対し、ハイエンド3D CAD「Creo」を展開するPTCは、設計プロセス全体におけるシミュレーション技術の活用に対し、研究開発、業務提携、買収などを積極的に行い、Creoの拡充を急速に進めている。最近の動きとしては、2018年6月に発表したANSYS(アンシス)との業務提携、そして2018年11月にアナウンスのあったFrustum(フラスタム)の買収がそれを象徴している(関連記事:PTCがジェネレーティブデザイン技術のFrustumを買収、Creoのポートフォリオを強化)。
これら業務提携、買収によりCreoを用いた設計プロセスがどのように変わるのか? 米PTC CTO室 マネージングディレクターを務めるスティーブ・ダーティン氏を招き行われた説明会の内容を基に、PTCが目指そうとしている設計プロセス変革のビジョンについて考えてみたい。
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業務提携、そして買収――設計プロセスの変革に向けて布石を打つPTC
まず、PTCは設計プロセスについて、形状を作り出す「生成」、その形状をより良くするための「反復」、そしてそこから導き出された形状を基にした高度な「検証」の3つのフェーズで捉え、それぞれのフェーズにおいてキーとなるテクノロジーおよびソリューションを戦略的に強化している。こうした戦略において、先の業務提携や買収がどう当てはまっていくのだろうか。
ANSYSとの提携で設計と解析との間で行われる「反復」の手間を大幅軽減
従来は設計者がCADで形状を作り出し、それをCAEツールで解析して、その結果を踏まえて再度設計を見直すといったフロー(反復的プロセス)が取られていたが、前述の通り、CADで設計したモデルとは別に、解析用のデータを用意する必要があり、やりとりに多大な手間と時間を要していた。こうしたことからも、高度な解析を行う前段階で、ある程度の検証を行っておき、設計品質を上げて、後工程での手戻りを減らす工夫というものが求められてきた。
こうした設計と解析との間で行われる「反復」の部分で、これまでにない手軽さを提供するものが、アンシスのリアルタイムシミュレーションツール「Discovery Live」の技術をCreoに統合した「Creo Simulation Live」である。2018年6月に行われた「LiveWorx 2018」において両社の提携が発表され、Discovery Liveの機能がCreoに組み込まれることが明かされた(関連記事:“より良い設計”のために設計者自身が行うべき解析とCAE技術の最新トレンド)。
アンシスのDiscovery Liveは、NVIDIAのGPUを利用して、構造や流体などのシミュレーション結果を瞬時に得ることができる対話型の解析ツールである。自動車エンジンのシリンダーブロックのような大規模なモデルでも十数秒程度で結果が得られるため、“解析結果を待つ”という時間的な拘束から設計者を解放してくれる。さらに、手間のかかるメッシング作業も不要なため、わざわざ解析のために設計者が簡略化したモデルを別途作る必要もない。
このDiscovery Liveの機能をCreoに組み込んだものが、Creo Simulation Liveだ。Creoと完全に統合されているため、モデリングした形状をそのまま同じCreo上でシミュレーションし、リアルタイムに解析結果を得ることができる。「われわれPTCは、さまざまな機能をCreoの中に完全に統合することで、設計プロセスにおいて設計者の皆さんを支援する自動化機能やツール間のシームレスな連携を実現している。ツールを切り替えたり、データ変換したりといった手間から解放される」とダーティン氏も述べている。
Creo Simulation Liveによって、設計したモデルを瞬時に解析できるようになるため、設計者はシミュレーション技術を構想段階から活用するという理想的な環境を手に入れることができる。Creo Simulation Liveは2019年3月に正式版がリリースされる予定だが、いち早くその効果を体験できる機会として、2018年12月末にアーリーアクセス版がリリースされ、登録手続きをすれば一定期間無料でCreo Simulation Liveの機能を利用できるという。
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