2018 SIMULIA Community Conference Japan
横浜ゴムが実践するAI×CAE×ヒトの“協奏”によるタイヤ開発(2/3 ページ)
「インフォマティクス・ベースド・デザイン」に基づくタイヤ開発を推進
続いて、小石氏は最適化のフローチャートについて解説。通常、タイヤのシミュレーション(FEM)は非常に膨大な時間を要する。そのため、従来の最適化ループの中に、タイヤのシミュレーションを直接ビルトインしてしまうと、処理が重たくてなり過ぎて使いものにならない。
「そこで、最適化のループの中にシミュレーションを組み込まず、ワンクッション置いて、まず『Isight』などで実験計画を組み、サンプリング点でシミュレーションを回して、データを取得する。そして、この得られたデータを基に近似モデルを作り、近似モデルベースの最適化を行う。さらにタイヤのように転がり抵抗や摩耗特性など、いろいろな特性が複数必要な場合には、多目的最適化となるので、そうした場合はパレート解と呼ばれる唯一の最適解ではなく、組み合わせ最適解のようなものがデータとして取得できる」(小石氏)
これが従来の最適化の流れだ。これに対し、機械学習を活用するとどうなるか? 具体的には、前述の近似モデルの作成部分が機械学習(予測モデルの作成)に置き換わり、同じく目的変数の算出(近似モデルの利用)部分が予測モデルとなり、最後のデータマイニングの部分に機械学習(決定木)が使われるようになる。
横浜ゴムでは、こうした考えをベースとした「インフォマティクス・ベースド・デザイン」に基づくタイヤ開発を推進。「インフォマティクス・ベースド・デザインでは、まず問題を設定する。具体的にはどのような目標を定めるかであり、設計変数や目的変数のパラメータが何か、制約条件があれば何を考えるべきかといった問題設定を行う。後は、シミュレーションに落とし込む。ここでわれわれは進化計算をうまく活用して効率的なデータサンプリングを行い、パレート解を含むデータを取得する。そして、取得したデータを機械学習でデータマイニングし、そこから設計指針を発見して設計開発に生かす」(小石氏)
※講演では、タイヤ開発での活用以外にも、ゴム材料におけるインフォマティクス・ベースド・デザインの適用例についての紹介もあったが、本稿ではタイヤ開発を中心にお届けした。
従来のドメインの壁を打ち破るものはAI、CAE、技術者による協奏
このように、タイヤやゴム材料の設計開発にAIやシミュレーション(CAE)技術を有効活用する横浜ゴムだが、“技術者(ヒト)"の役割も重要だと説く。
小石氏は「AI、ここでは機械学習のことだが、これを活用することで、予測あるいはデータマイニングが実現可能となる。ただし、学習データがなければ始まらない。一方、CAEは新たなデータを計画的に取得できるというメリットがあるが、そのためには問題設定が非常に重要になる。そして技術者。彼らの役割は問題設定や“ひらめき”である。これらを行うためには、何より情報が不可欠だ。そのように考えると、AI、CAE、技術者の3つの関係は、それぞれが密接に連携して、どこにも抜けがないようにつながっていなければならない。つまり、AI、CAE、技術者がともに“協奏”して、設計開発を進めることが望ましい」と持論を述べる。
さらに、イノベーションにつながる新たな発想をもたらす要素、そしてその源泉となる情報の獲得について、“異分野技術者との協奏”を挙げる。「AIはツール単独で成果が出せるものではなく、必ずヒト(技術者)が介在する。つまり、『誰がやるか』によって得られる結果(情報)は変わってくる。それはCAEでも同じだ。さまざまな情報を得るには、異分野の技術者と一緒に仕事をすることも大切だ。彼らとの協奏により、新たな発想、新たなモノの見方が生まれ、そこから新しい問題設定につなげることで、先に進むことができる」(小石氏)
従来のドメイン(自身の領域)で得られた過去データを基に、機械学習やシミュレーションで新しいデータを作り出すことができる。その新しいデータから何かしら“ひらめき”が生まれ、新たな情報が得られたとすると、そこから革新につながるようなものが取得できる。だが、従来のドメインには壁が存在する。それは、従来の常識にとらわれた問題設定をしているがための壁だ。
「そうした従来のドメインの壁を打ち破るものこそ、AI、CAE、技術者による協奏であり、その効果は大きいと考えられる。壁を破り、新たな領域に対して問題設定を行い、そこに新たなデータを生み出す。そこから“ひらめき”が生まれ、イノベーションへとつながる――。そう信じて、われわれも日々取り組みを進めている」と小石氏は思いを語った。
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