SOLIDWORKS Simulation ワークショップ
パスタで橋を作ってデザインが構造を強くすることを証明せよ! 設計者CAE講座(3/3 ページ)
解析結果と実験結果が違う!? は何が間違っていたのか
続いて、大澤氏のスタンダードなパスタ橋を用いた実験が行われた。ここでは、SOLIDWORKS Simulationに近しい結果が得られるかどうかを検証する。スコア自体は以下の通りだったが、実際に荷重をかけていくと、パスタ橋の上部が横にゆっくりとスライドするような格好で崩れ落ちた。先ほどの線形静解析のシミュレーションでは下部に引っ張りの力が集中し、中央から全体的に沈むような動きだったのだが、なぜ結果が違うのか?
SOLIDWORKS(大澤氏)チーム:
荷重370g ÷ パスタ橋の重量20.6g = 17.96ポイント
「実は、解析といってもいろいろなタイプの解析があり、その選択を誤ると自分がたどり着きたい目的に到達できないことがある。先に答えを述べると、パスタ橋のようなケースでは『座屈解析』を行うべきだ」と大澤氏。鉄は引っ張りに強く圧縮に弱い、コンクリートは引っ張りに弱く圧縮に強いといったように、材料にはそれぞれ特性がある。今回のパスタは長くてしなやかであり、圧縮に弱いという特性がある。こうしたものを解析する場合には、線形静解析ではなく座屈解析の方が適しているそうだ。
そこで、SOLIDWORKS Simulationで座屈解析を実施。解析の種類を座屈解析にして、材料や拘束条件などは先ほどと同じものを設定して、[スタディの実行]を行う。すると、先ほどの実験結果のように、パスタ橋の上部が横に揺れる動きを解析結果から得ることができた。「今回のように実験結果とCAEの解析結果が大きくことなる場合は、解析の種類が間違っているケースも考えられる。そんな落とし穴もあるということを、ワークショップの実験を通じて体感してもらいたい」(大澤氏)
通常のワークショップでは、こうした解析の違いや材料特性を踏まえつつ、さらに製造しやすい優しい設計を念頭に置いて、チームごとに強いパスタ橋の設計を行う。
作る(製造する)って大変……コンペの結果は!?
各チーム、最適解と思われる形状が出来上がったらいよいよ製造、コンペである。実際にパスタをカッターで切断し、ホットボンドで接着する作業をひたすら行っていくわけだが、前述の通り、分業して作業するチームもあれば、全員体制で作業するチームもあり、そのプロセスはさまざまだという。
今回の特別版のワークショップでは、大澤氏のトラス構造の橋を参考にしつつ、若干のアレンジ(素人のあがき)を加えたパスタ橋を作ることにした。
実際、筆者ともう1人の計2人の“素人”で製造作業を行ってみたが、これが大苦戦……。見た目がシンプルなトラス構造だが、どの順番で接着すべきか、どの部材を上(あるいは下)にして組んだ方がいいのかなど、頭の中が「?マーク」だらけになりながら、両端からおのおの組み上げていった。
その結果、荷重をかける前から全体的に大きくゆがんだ前衛的なパスタ橋が完成した。「実際のワークショップでは、『精度良く作るためには治具も作らないと!』などという声も上がってくるほどだ」(大澤氏)というから、製造業従事者の皆さんの品質へのこだわりには脱帽する。
最後はいよいよコンペだ。今回はコンペ相手のチームがいないので、先ほど実験した大澤氏のパスタ橋と競うことになった。どうにか完成した筆者チームのパスタ橋と、大澤氏が製作したトラス構造のベーシックなパスタ橋、どちらが強い橋なのか……。結果を見るまでもなく、筆者チームの惨敗であった。スコアは以下の通りだ。
筆者チーム:
荷重280g ÷ パスタ橋の重量23.8g = 11.76ポイント
【再掲】SOLIDWORKS(大澤氏)チーム:
荷重370g ÷ パスタ橋の重量20.6g = 17.96ポイント
筆者チームのパスタ橋は、そもそも“外れない前提”としてホットボンドでしっかりと固定しておく必要のある接合部が、計測途中で外れるなどのアクシデントに見舞われ、戦う前から製造品質の低さが露呈。異例の修復作業後のリベンジで何とか280gまで荷重をかけることができたが、最終的に3箇所の部材が割れ、別の接合部も外れてしまった。
お分かりの通り、このワークショップは単なる設計者CAEの啓蒙(けいもう)ではなく、「デザインが構造を強くする」ことを証明するというテーマが根底にあり、設計が構造にどう影響を与えるかを知るための手段として、CAEによる解析の有効性をワークショップ形式で説いている。また、橋の構造や材料などを題材にした座学も興味深く、構造物や部材そのものの形状の意味や役割についても多くの学びが得られた。そして何より、設計から解析、製造、実験までの一連のプロセスを体験できるため、「プロセス管理」「製造を意識した設計(製造に優しい設計)」についてあらためて考える機会にもなり、プロセス全体を意識した“視野の広い設計者”の育成にも一役買いそうだ。
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