RobiZy設立記念セミナー
「生産現場でのロボット活用」を進めるために必要なプレイヤーとは(3/3 ページ)
佐藤氏はロボット活用社会の実例として、相模原市の産業化事例を紹介した。これは2014年度から相模原市が取り組んできたもので、官民一体で潜在ユーザーの掘り起こしから、実際の導入、その後の経済評価までを行った、壮大な地域実証実験ともいえる取り組みだ。最初期の段階で佐藤氏が進言したのが、潜在ユーザーの掘り起こしを可能とする銀行を巻き込むことと、持続性が確保できる100の導入事例をつくることだった。
銀行と100の導入事例
「潜在ユーザーを掘り起こすためには、地元の中小企業をよく知っているプレイヤーが不可欠です。銀行は地元の企業がどのようなビジネスをしているか、財務状況まで把握しています。実際に、銀行の協力を得て潜在ユーザー250社のリストを作ることができました」(佐藤氏)
相模原市は東京都心にさまざまな商品を供給している生産基地であり、多種多彩な産業が集積している。また、特定の産業に偏っていないため、多彩な業種のロボット化事例をつくることができる。東京から近く大メーカーにもまれているので、ロボット導入がもたらす効果を厳しく評価でき、スピーディーな決断を下す能力も持っている。その上、地元にロボットメーカーがなかったことから、特定メーカーの影響を受けずに最適な製品選定ができる土地でもあった。
課題は、やはり啓発と教育だった。中小企業の工場の多くはいまだに人間の手に頼っており、生産技術系の部署にもロボットを熟知した人材は少なかった。
「導入段階で力になったのは、治具などを手掛ける自動機メーカーです。自動機メーカーは作業の自動化を熟知しているので、もともと作業分析ができ、少しロボットの動かし方を学んでもらうOJTで、工場のどの部分をロボット化すれば効果的なのかという工程分析ができるようになりました」(佐藤氏)
ソフトウェアや運用の面でも、地元のソフトウェアハウスがSIerとなることに期待が寄せられている。ロボットビジネスに興味のあるSIerやその卵となるベンチャー企業に教育のチャンスを与えることで、専門家がいない中小企業のロボット導入と運用を支える力になる。ロボットメーカーとユーザー企業だけではなく、地元の関連プレイヤーが協力し、新たなバリューチェーンを生み出すことが大切だと、相模原市の事例は教えてくれる。
「ロボット導入は中小企業の人手不足のみでなく、副次的な効果をもたらすことが分かりました。ロボットと人間の協働により、人間の作業は高付加価値化されます。人材が集まるようになり、優秀な人が企業に残るようになりました」(佐藤氏)
「ロボットバリューチェーン」づくりが日本の生き残る道
最後にまとめとして佐藤氏は、これから日本がロボット産業で世界と戦っていくためにどう進んでいくべきか、相模原市の事例や自身の経験から提言した。
「かつて日本はメカトロ製品の輸出に強みを持っていました。今は社会インフラの輸出に力を入れています。来るべきロボット活用の時代においては、ロボットバリューチェーン輸出が日本の強みとなるでしょう」(佐藤氏)
改善を積み重ね、モノやサービスの質を変えられるのが日本人の特技である。日本製の高品質の自動車や、繊細なサービスが売りのコンビニ、正確無比な公共交通システムがその好例である。
いま必要なのはこれらのロボット化を推し進めることと、現場でのロボット使いこなしノウハウと活用事例のさらなる集積だと佐藤氏は言う。2014年のロボット革命宣言をきっかけとし、2020年までに国外に見てもらえるような事例を地域でつくり、超高齢化社会が訪れる2025年までに日本全国でその社会実装を推進し、2030年にはバリューチェーンとして世界に向けて輸出できるようにすべしと、そのロードマップを語った。
「産業用ロボットからサービスロボットへ進化したとき、現場に改善できる人がいるのは日本の強みです。マニピュレーションなど、ロボット機能で仕事や行動を革新するプロセスイノベーションを起こせるかどうか、それがロボット産業のこれからの主戦場になるでしょう」(佐藤氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
特集(FA)
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界には好機 脱炭素×コスト削減×現場改善を実現するエネルギー戦略 -
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収したい 自動車業界にも有効なCO2削減アプローチ -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
CAE解析をAIエージェントに任せてみた 人は何を担うのか
-
2
高度な半導体/電子デバイスの非破壊不良解析を支える「3D X線技術」に迫る
-
3
「ロボットアーキテクチャ」実態調査2026年版:現在の課題と優先事項を解説
-
4
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:製造現場にフィジカルAIをどう実装するか――電子版2026年9月号
-
5
スマート工場動向調査2026
-
6
「見て覚えろ」が通じない時代 製造業の保全技術はどのように継承すればよい?
-
7
動き出したファナックの「フィジカルAI」
-
8
【読者調査結果】製造業の脱炭素動向調査2026
-
9
はじめての化学工学まとめ(Part1)
-
10
QC活動の形骸化はどう防ぐ? 実効性のある業務へ転換する3つの解消策とは
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー