IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(4)
ソフトウェアの品質は「制御」できるか(5/6 ページ)
組み込み系品質を制御する
組み込み系品質の制御も一般のソフトウェア品質制御と同様であるが、組み込みならではの品質制御も多い。ここではそれを見ていくことにする。
品質制御は組み込みソフトの王道
QoS(Quality of Service)制御と呼ばれる品質制御は一般に、特定のある品質を落とすことで、別の何かを得ることである。例えば、送信する画質を抑えて、その代わりに送信を安定させるQoSがある。最高の画質を求めるのではなく、通信路の性能に応じた画質になるように品質をトレードオフして制御する。この「計画的な品質劣化」でバランスさせる品質制御は、組み込み系ソフトウェアで多く採用される有用な考えである。
組み込み系ではどうしても資源が乏しい。貧弱なプロセッサ、貧弱なメモリ、貧弱な通信路、貧弱なI/Oを使いこなし、リアルタイムで処理するには、どうしてもQoS制御を含む品質制御が必要になる。この計画的な品質劣化による品質制御はIoTでもさまざまに使用されている。
通信路が悪くなる、あるいは遮断されると、縮退運転に移行する動作も組み込み系では多く見かける。Web系やエンプラ系でも見かけるが、組み込み系ではネット切断は当たり前に起きるものとして作られている。大胆な制御であるが、有用な品質制御であるともいえる。
余談になるが、物理現象を伴うハードウェアでは、安全対策の1つとしてフェイルセーフがある。これはハードウェアのリスク対策であり、セキュリティ対策であり、品質制御でもある。列車の遮断機を例にすると、なんらかのアクシデントで遮断機の電源が落ちると遮断機のバーは降りて、車や人が線路を通行できないようにする。これは電源が切断されれば、物理現象として遮断機が物理的安定状態(つまり位置エネルギーの小さい方=低い方)に移行することを利用している。
しかしこれはソフトウェアには利用できない。ソフトウェアには物理的安定状態がない論理世界で動作する。このため電源が切れたら0やfalseに自然に移行しないのでソフトウェアでは物理現象を利用したフェイルセーフは実装できない。残念。
組み込みはシステム全体で品質を制御する
組み込み系ソフトウェアはソフトウェア単独で動作するのではなく、メカやエレキも含んだシステムで動作する。当然、システム全体の品質制御が必要になる。メカやエレキの不都合な品質をソフトでカバーすることが多々ある。逆ももちろん少しだけはある。ソフトの遅さをハードの高速実行でカバーするという恩恵も受けるが、ほんの少しだけである(ソフト屋の一方的な思い込みが多少入っているかもしれない)。
組み込みはソフトだけで考えても、ファームウェアやデバイスドライバ、その上位層のアプリケーションなどのように、エンプラ系よりもソフト構成が多層になっていることを考慮しなければならない。品質を制御するにもこれらの各層が融合して、どこでどのように品質を制御するのか、これが品質制御を一層難しくしている。
また組み込みは並行動作や割り込み動作が多い。これもまた品質制御を難しくしている。品質制御のためのモデルを作るのでさえ、大層な並行動作が基本になり、面倒である。モデルが作れなければ計測も制御もできない。並行動作モデルを作るところから始めて、品質制御への道を開拓するしかない。
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IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質
組み込みソフトウェアにおける「品質」とは、一体、何者であろうか。多用されている言葉であるがその実態はようとしてしれない。この連載ではIoT時代の組み込み系ソフトウェアの品質」をテーマに開発現場の目線で見ていく。出演者は情報系に籍を置く大学1年生の紅美 香美(くみ こうみ)と品質 寛容(しなしち ひろい)。
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