大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
組み込みで「CNNによる推論という手法は定着する」といえる理由(2/3 ページ)
「組み込み」と「畳み込みニューラルネットワーク」の関係
さて今月の話はここまでが枕。本題はここからである。そんな訳でCNNというと学習側のソリューションが華々しい事もあり、こちらばかりに目が行きがちであるが、これと並行して推論側のソリューションも次第に登場しつつある。
実のところCNNは、組み込みと非常に相性が良い。例として3軸の加速度センサーを使って地震計を構築することを考えてみよう。まずは適当なマイコンに加速度センサーをつなげば出来上がりである。最近だとI2Cで接続できるタイプも多いから、手馴れていれば10分でプロトタイプが出来上がる。ただ、そのままデータをとっても細かい振動やブレなどが山ほど出てくるだけである。
そこで、生データをそのまま使うのではなく、フィルタリングの必要性が生じる。単純にローパスフィルターを掛ければ長周期の振動が出てくるから、例えば地震が起きた後の建物の変位状態などを知るには適切であるが、その一方で地震波そのものを取りたい場合には適さない。特に「地震波とその他(道路を走るトラックの振動とか)を区別したい」なんて場合には、単純なフィルターではうまくいかないので、実際には波形のピークとか時間などを勘案して判断する必要があり、高度な計算技術が必要になる。
実はこうしたケースでCNNは非常に役に立つ。あらかじめ風による揺れ、地震、路面のトラックなどの揺れ、などのパターンを学習させておけば、それぞれのパターンにおける振動を検出して、上位に警報を出すなり、振動データを蓄積するなり、といったアプリケーションは比較的簡単に構築できる。もちろん、そのパターン学習をどうするんだ?という問題は残っているわけだが、各所で蓄積中のさまざまな地震計データを利用しての学習は可能だし、将来的には3軸加速度センサーのベンダーがそうしたものを提供してくれる可能性もあるだろう。
別にこれは加速度センサーに限った話ではなく、さまざまなセンサー類をIoTでつなげるという話をする際に、必ずフィルタリングの話が出てくる。生データをそのままクラウドに流すと間違いなく帯域が足りなくなる。なのでフィルタリングするなり、クラウドの手前で一度データ処理をするなり、といった議論が最近盛んだが、こうした用途にCNNは非常に適している。これとは別に、スマートフォンにCNNを乗せて画像認識とかAR/VRなどに使おうといった話もあるのだが、組み込みも無縁ではない。
こうした用途が将来生まれるであろう事を予測してか、最近は組み込み向けの推論エンジンのソリューションが各社から発表されている。
米CEVAはCDNN(CEVA Deep Neural Network)という自社のDSP向けとなるCNN用のSDKを以前から提供してきていたが、2016年10月にはComputer VisionとCNN向けに性能を強化した「CEVA-XM6」をリリースして、この分野に本腰を入れて進出している。米VeriSiliconは2017年5月に「Vivante VIP-800」というCNN専用アクセラレータIPを発表したほか、同年6月にはMesh構成のCompute IPを発表するなど、性能向上に余念が無い(VeriSilicon Unveils Vivante 2 Teraflop “MESH” Architecture Compute IP Cores for Embedded Devices)。
台湾Andes Technologyは汎用のCPU IPを提供する会社だが、同社のプロセッサIPがWave ComputingのCNN向けアプライアンスに採用されたことを発表するなど、CNNとは無縁ではないことをアピール中である(Andes Technology Provides System Control Processor IP for Wave Computing’s Revolutionary Dataflow Processing Unit Design)。
米Synopsysは今月、同社が提供するDesignWave EV61/62/64にCNNエンジンを追加することを発表している(組み込みビジョンプロセッサのCNNエンジンを強化)。米Cadenceも2016年5月にCNNをターゲットにしたTensilica Vision P6 DSPをリリースしている(Cadence Announces New Tensilica Vision P6 DSP Targeting Embedded Neural Network Applications )。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー