テクノブレーン AIセミナーレポート
人間を超えるセンシング能力をクルマに! デンソーが取り組むAIプロジェクト(2/3 ページ)
「アルゴリズム」「半導体」「品質基盤」を柱にAIの実用化を目指す
AI R&Dプロジェクトの体制は東京、シリコンバレーの2拠点あり、東京ではアルゴリズム、半導体、品質基盤を、シリコンバレーでは現地のベンチャーや大学との共同開発(オープンイノベーション)に関する取り組みを行っている。講演で、岩崎氏は東京での取り組み事例の概要について順番に紹介した。
まず、1つ目の柱がアルゴリズムだ。「AIに限らず最先端の技術をクルマに適用しようとすると、車載ならではの制約が付きまとう。熱や消費電力などの問題から、PCやサーバで使われているようなコンピュータリソース(CPUやメモリ)をそのまま搭載することができない。そのため、車載には高速化や省メモリ化といったアプローチが必要になる。また、大量の学習データをどうするか、計算機環境をどうするかといった課題もある」と岩崎氏は述べる。
画像認識については、車載機器への搭載を前提に高速化、省メモリ化を実現した汎用物体認識ソフトウェア「SPADE(Scalar Product Accelerator by integer DEcomposition)」およびディープラーニング(深層学習)を用いた歩行者認識の研究開発に取り組んでいる。「通常、単眼カメラを用いた物体認識をするような場合、特別な半導体(演算用ハードウェア)が必要となるが、SPADEではこれをCPUリソースのみで動かせる。パターンを学習することでさまざまな対象を検出できるようになる」と岩崎氏は説明する。
SPADEの肝となるのが「バイナリコード化技術」で、従来のHOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量とSVM(Support Vector Machine)を使った手法の約10倍高速化できるという。これは実数の特徴量の代わりに、バイナリコード(2値)の特徴量を用いることで、高速な省メモリ処理を実現する技術で、「実数で表していたある意味冗長な情報を、バイナリで究極まで圧縮することで演算量を減らしている」と岩崎氏は解説する。
また、3年ほど前に発表したディープラーニングを用いた歩行者認識と分散学習の取り組みについても紹介。単眼カメラの画像から、1つのニューラルネットワークを用いて、歩行者の有無を検知し、身長、距離、体の向きを推定する手法を開発した。「今でこそ当たり前だが、その当時データの数が勝負を分けることを痛感した。そうなると、大規模データの学習時間をいかに短縮するかがポイントになってくる。1台の計算機で数カ月、あるいは1年もの時間を要するようでは、いつまでたっても実用化できない。学習時間を短縮するためにはアルゴリズムとハードウェアが必要だ」(岩崎氏)。そこで、用いられたのが学習処理の分散化手法「SPRINT(SuPeRcomputation In Neural Training)」である。そして学習高速化の研究については、東京工業大学のGPUスパコン「TSUBAME」が用いられたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
特集(自動車)
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー