IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(5)
生産設備の全体最適化に目を向けなければ、現場の課題は解消されない――ヤマハ発動機(2/3 ページ)
全体最適化を実現する上でポイントとなったソフトウェアPLC「CODESYS」
「Advanced Robotics Automation Platform」には、ドイツの3S-Smart Software Solutions社が開発したソフトウェアPLCの「CODESYS」が採用されている。“つなげる”ことを自在にコントロールするために、「CODESYS」を選択した理由をうかがった。
筆者 「Advanced Robotics Automation Platform」は、ソフトウェアPLCの「CODESYS」を採用しています。選定のポイントは何でしたか。
村松氏 「CODESYS」はインダストリー4.0の本流といわれている「OPC-UA」規格にも準拠しています。これにより、上流との通信環境などはほぼ万全になります。なおかつ足回りでいうと、EtherCATやEtherNet/IPなどの標準的なフィールドネットワークにも対応し、さらに制御やセンサー周りを自在にカスタマイズできる汎用性を備えています。インターネット接続からアクチュエーターやセンサーなどの足回りまで、総合的に網羅している制御ソフトウェアのプラットフォームとして最適だったということです。「CODESYS」を採用することで、必要な個々のソフトウェアをバラバラに購入し、それをつなぎ合わせるということに労力を割く必要がなくなります。そして、われわれの本来の目的である、当社のロボット製品をいかに適合させて、全体が最適化された使いやすいシステムとして提供するか、ということに集中して開発することができました。
また、当社の統合プラットフォームの特徴は、ヤマハのロボットや搬送システムだけではなく、主にモーターで制御されているような、ユーザー企業が独自に設計したユニットもまとめて制御できるということです。プログラムもヤマハのロボット用、自社ユニット用というように分ける必要がなく、同じ環境で作ることができます。そのようなことも含めて対応できるソフトウェアPLCとして「CODESYS」は最適でした。生産設備全体の最適化と徹底的に向き合って作ったのが、「Advanced Robotics Automation Platform」なのです。
生産設備の全体最適化により、ロボット本来の稼働率が向上
これまでは、生産設備においてロボットがモノをA点からB点に、いかに素早く、スムーズに動かすことができるか、ということが競争のポイントであった。しかし、村松氏は、そのようなことは既に大きな差別化ポイントにはなり得ず、今後はロボットが本来すべき役割の稼働率をいかに高めるかがポイントであるという。生産設備におけるロボット作りも、次のステップに来ている。
筆者 ロボットがモノをいかに素早く、スムーズに動かすことができるか、ということを訴求する時代は、既に終わっているのでしょうか。
村松氏 自動車メーカー各社が馬力競争をしていたのは30年以上も前の話です。今は車が4気筒なのか、6気筒なのか、何CCなのかも、気にする人は少なくなっています。それよりも、車を使って、どのようなカーライフを楽しむか、レジャーを楽しむかというように、より目的志向にシフトしてきています。ロボットの精度や移動速度の比較は、自動車の馬力競争のようなもので、現在それらは、ほぼ成熟しています。それよりも、ロボットを使ってさらに何ができるのか、ということの方が重要になっているのです。
また、部品の自動組み立てラインでは、ロボットの稼働率が極めて低いといえます。つまり、ロボットはネジを締めたり、接着剤を塗ったりという本来の目的を果たす時間よりも、ネジ締め工程から接着工程へ運んだり、位置決めしたりする時間の方が長いこともあります。このような無駄な時間をもっと短くして、ロボットの稼働率を限界まで高めることが重要です。「Advanced Robotics Automation Platform」の製品群には、リニアコンベヤーモジュールというリニアモーターを応用した無限循環搬送システムが含まれており、これはモノを工程から工程に運ぶライン内物流を効率化、高速化する仕組みです。これにより、ロボットの稼働率を大幅に高めることができるようになります。また、当社では生産ライン全体を、大きな1つのロボットと具体的に捉えることにより、徹底的に無駄を省くシステムを考案しました。
筆者 ヤマハ発動機がロボットをロボットとして売るのではなく、システムとして考えるようになったのはいつごろだったのでしょうか。
村松氏 2年半ほど前からです。今後は、生産設備も目的志向に変化していくだろうと見方を変えたのです。企業が求めるスピード感は、10年前のスピード感と全く異なります。投資コストも昔と比べると、非常に厳しくなってきています。しかし、求められることは、ますます高度化しています。つまり、互いに相反する時間、コスト、高度化の全てに対応していかなければなりません。そのためには、今までやってきたけれども、実はやる必要性がないことは、どんどん排除していくようなシステムでないと、これからは対応できないということなのです。余計なことに時間を費やしている余裕は残念ながらもうないのです。
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IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
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