DMS2017 オートデスク ユーザートークショー
あらゆる産業がモノづくりをビジネスに!? これからの製品開発と設計者の役割(2/2 ページ)
トヨタ、ホンダ……自動車メーカーとのコラボレーション
司会 ――最近では「オープンイノベーション」をキーワードに、製造業、特に自動車メーカーとのコラボレーションも増えてきているようですが?
横井さん まず、トヨタ自動車の超小型電気自動車「i-ROAD」における、3Dプリンタを活用したカスタマイズサービスが挙げられます。トヨタ自動車が超小型モビリティの利活用の可能性を探る中、新しいアイデアを社内だけではなく、社外からも集めようということで「OPEN ROAD PROJECT」を実施しました。その1つとして、カブクでは3Dプリンタで作ったパーツでi-ROADをカスタムするサービスを手掛けました。
これはi-ROADの試乗パイロット向けのサービスとして提供したもので、実際に試乗パイロットの方にフロントパーツをカスタムしてもらい、カブクの製造パートナーの工場を用いて造形して、約2週間でパーツをお届けしたという実績もあります。特別なモノづくりの技術がなくてもサービスを通じてクルマをカスタムできる、それも自動車メーカー公認で楽しめるというのが、このプロジェクトが示すモノづくりの新しい動き、可能性だと思います。
もう1つは、ホンダとのプロジェクトです。ホンダの超小型モビリティ「MC-β」をベースに、3Dプリント技術を活用した車両を共同製作したものです。
ホンダは実証実験を通じて、特定の地域や観光地などでMC-βを試験的に使用してもらい、超小型モビリティの利活用の可能性を探っていましたが、その中で「非常にニッチな強いニーズ」を意見として耳にするケースがあったそうです。しかし、あまりにニッチな要求なので、量産を前提とした通常の自動車製造のように金型を起こしてモノを作るアプローチでは実現が難しいということで、3Dプリンタを中心としたデジタル製造を手掛けるカブクに声を掛けてもらいました。
具体的には、鎌倉で有名なお菓子「鳩サブレー」の豊島屋の配達車両を作成しました。鎌倉は、細い路地も多いためMC-βのような超小型モビリティが適しています。ホンダ、豊島屋、カブクの3社でスムーズな配達の実現と、鳩(はと)をモチーフにしたデザインの要求を満たす車両を製作し、何とかお披露目の場であった「CEATEC JAPAN 2016」に間に合わせました。
コラボレーティブデザインを促進する「Autodesk Fusion 360」
司会 ――この3Dプリント技術を用いた車両の製作に、「Autodesk Fusion 360」が使用されたのですよね。
横井さん はい。Fusion 360でとことん設計を追い込み、そのまま複数の製造パートナーの工場でパーツを同時に造形することで、約2カ月という過密スケジュールの中、何とかCEATEC JAPAN 2016に間に合わせました。通常の自動車製造のように金型から設計していくやり方では、半年~1年くらいはかかったのではないでしょうか。
また短期間の中、自動車メーカーであるホンダとモノづくりは初めての豊島屋、そしてカブクの3社で、それぞれの要求をすり合わせながら仕様を詰めていくという作業に、クラウドベースのFusion 360の機能が役に立ちました。それこそ打ち合わせ先で設計を変更したり、レンダリングをし直したりすることもありました。私が持ち歩いている非力なPCでもクラウドレンダリングのおかげで、デザインイメージのすり合わせがスムーズに行えました。
それと「A360」にも助けられました。Fusion 360は基本的にクラウド上に設計データを保存するので、PC以外の環境、スマートフォンやタブレット端末でも設計データを確認できます。実際に、ノートPCを忘れてしまったことがあり、スマートフォンで3Dモデルを見せながら打ち合わせしたことがあります。
司会 ――最後に、横井さんはカブクというモノづくりベンチャーの中でインダストリアルデザイナーとして活躍されていますが、これまでと現在とでどのような仕事面での違い、変化がありましたか?
横井さん インダストリアルデザイナーとして、前職(カメラメーカー)では、モノそのものをデザインする部分にひたすら突き進んでやってきました。カブクに入ってからは、そうした部分だけではなく、3Dプリンティング技術をどうやって顧客に届けるか、どうやったら目の前の顧客が喜んでくれるかといった視点や、企業同士をどうやって結び付け、新しいモノを生み出すかといった、モノを作る以外の部分をデザインする能力も必要だと実感しています。
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