IoTスペシャリストを目指そう(11)
第11問 センサーとMEMS(1/2 ページ)
スマートフォンなど小型のIoTデバイスが位置や移動速度といった情報を得るために利用しているのが、各種のセンサーです。非常に小さなそれらはMEMS(微小電気機械システム)と呼ばれ、IoTの実現に欠かせない要素となっています。
スマートフォンは一見IoTとは関連がなさそうに見えますが、立派なIoTデバイスです。GPS信号で位置を測定し、歩いた道を地図上に表示するサービスなら、位置情報をクラウドに送信して地図情報を生成し、その結果をディスプレイに表示しています。これはIoTの基本的な構図に従ったシステムといえます。
加速度センサーを使えば、歩行の振動を検知することで歩数を測定することもできます。機械的な出力を行う機器であるアクチュエータとして、バイブレータも内蔵しているので、予定した歩数を歩いたことを振動で知らせることもできます。なお、バイブレータの実体は偏心した重りを持つモーターです。
第5問ではセンサーを動作させる組み込みシステムについて説明しました。ここでは、センサーの代表として物体の移動速度の変化を検出する加速度センサーや、物体の回転を検出するジャイロセンサーなどを説明します。
スマートフォンに内蔵された加速度センサーやジャイロセンサーは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれます。MEMSはミクロン単位の機械構造と電子回路を併せ持つ微細機械のことで、マイクロマシンとも呼ばれます。MEMSの技術は意外に古く、MEMSを用いた圧力センサーは1970年代から開発されています。
加速度センサー
バネでつるされた重りは加速度によって位置がずれます。この位置のズレを静電容量の変化などで検出し、そこから加速度を求めます。加速度センサーはMEMS技術を用いて、バネや微細な重り、測定回路などを作成しています。X軸、Y軸、Z軸の3軸を1つのセンサーで検出する3軸加速度センサーを用いれば、静止状態で重力加速度の方向、つまり上下方向を知ることができます。
可動部と固定部の間の静電容量から、ズレを調べる「静電容量検出方式」は温度特性の良さが特徴です。可動部を支持するバネ部分に半導体ピエゾ抵抗を用い、ひずみによる抵抗値の変化を検出する「ピエゾ抵抗方式」もあります。
「熱検知方式」は重りを使わない方式です。気体分子を密封してヒーターで過熱し、発生する対流現象を温度変化で検知しています。消費電流が大きくなりますが、可動部分が無いので耐衝撃性に優れます。
ジャイロセンサー
加速度センサーは速度変化を検出しますが、ジャイロ(角速度)センサーは物体の回転を検出します。従来のジャイロセンサーは「地球コマ」のような回転体を用いる機械式のもので、航空機などで用いられましたが、スマートフォンではMEMS技術を用いたジャイロセンサーが用いられています。自動車の横滑り検出や、デジタルカメラの手ブレ検出などにも用いられます。
3軸角速度センサーでは前後軸、左右軸、上下軸の回転をロール(横揺れ)、ピッチ(縦揺れ)、ヨー(船首・機首揺れ)と呼びます。車の横滑り検出にはヨーの1軸を検出するヨーレートセンサーを用いますが、スマートフォンやゲーム機では3軸の回転を1つのICで検知する3軸ジャイロセンサーを用います。
振動式ジャイロセンサーは、振動している素子に働くコリオリの力を静電容量の変化として検出します。コリオリの力は回転する物体が移動する時に横方向に受ける力のことで、台風の渦などに影響を与える力です。振動する素子とその周辺回路はMEMS技術で1つに集約されます。
その他のスマートフォン向けセンサー
加速度センサーやジャイロセンサー以外に、GPSセンサーや照度センサー、接近センサーなどがスマートフォンには用いられています。GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)は人工衛星を利用して地球上における位置を正確に求めるシステムです。24個以上のGPS衛星が高度約2万kmの起動に配置され、3つの衛星からの電波を受信することで経度と緯度を、4つの電波からさらに高度を求めることができます。以前は精度が100mに制限されていましたが、現在は電波の状況にもよりますが単独測位で10m程度の精度です。
照度センサーは周囲の明るさ(照度:Lux)を測定するセンサーです。照度センサーを用いると夜間にバックライト照度を自動的に切り替えることができます。接近センサーは通話時に耳を本体に近づけた時にディスプレイをOFFするために用いられます。赤外線発光素子と受光素子を用いたものなどがあります。
今回の問題
それでは、IoT関連の知識・スキルアップに役立つ問題を出題します! 今回はセンサーに関連する設問となります(※)。
問題(11):
加速度や傾き、方向などを検出するセンサーに関する説明として正しいものを1つ選びなさい。
- ジャイロセンサーで、上下方向を検知することができる。
- 加速度センサーはコリオリの力を利用して物体の移動速度を検知している。
- スマートフォンに用いられるジャイロセンサーはMEMS技術で作られている。
- 加速度センサーは物体の移動速度の変化を検出するセンサーなので、上下方向を検知することはできない。
※本連載の設問が実際のIoT検定にそのまま出題されるわけではありません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
IoTスペシャリストを目指そう
IoTプロジェクトを計画・推進するには、産業システム、法律、デバイス開発、無線ネットワーク、データ分析、セキュリティなど幅広い知識が必要となります。本連載ではIoT検定制度委員会監修の下、IoT関連の知識・スキルアップに役立つ問題を出題し、その解答を詳しく解説していきます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー