沖縄モノづくり新時代(8)
沖縄の交通課題の救世主となるか!? 自動走行バスへの大きな期待と開発の現状(3/3 ページ)
路肩との間隔は10cm、バス停横にぴたりと停車
車両開発を担当した先進モビリティが、今回の実証実験で特に重要な項目として挙げたのが、バス停にぴたりと横付けをして停車させる「正着制御」という運転動作だった。公共バスが一般的な乗用車と大きく異なる点は、車両の大きさもさることながら、バス停に定期的に停車することにある。身体の不自由な方や高齢者の利用を考えると、バス停から離れることなく高い精度で停車し、スムーズに乗り降りしてもらうことが、自動走行バスの使い勝手を大きく左右するとの考えだ。
バス停の近くに車両が到着すると、運転手(人)の方向指示器の操作をトリガーに「正着制御モード」に切り替わる。対象物の形状や距離のセンシングを行う「ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)」を使い、バス停横の縁石までの距離を測りつつ、あらかじめざっくりと設定してある軌跡に沿いながら車両をバス停までゆっくりと寄せていく流れになっている。
試乗時の正着制御もゆっくりとした動きだったものの、バス停横にバスがぴたりと止まり、スムーズだった。バス停横の路肩と停車したバスの間隔は10cm程度(図5)。一般利用者には違和感なく乗降車できる距離だが、車椅子の方や高齢者でもスムーズに乗降車できるよう、路肩と車両の間を4cm程度まで縮めることを目指すという。
走行中に駐車車両などの障害物があった場合にも、障害物までの距離をライダーで検出し、自動で車線を変更する。車線を変更するときに対向車が近づいてきた場合は、同様にライダーで検出し、対向車が通り過ぎるまで停止して待っておく。
実用化に向け乗り越えるべき山は、まだ先に幾つも
往復2.4kmの実験コースのうちほとんどはスムーズな運転だったが、実は1回だけ自動走行バスであることを強く感じる場面があった。直進時、自動で走っているバスのハンドルが突如として左に回りだし、縁石に接近するということが発生したのだ。運転手がすぐにハンドルを持ち、進行方向を修正したため、事なきを得たが肝を冷やした。
試乗後に技術スタッフの方に原因を聞いたが、その時点では原因は不明とのこと。今回の実験コースで20回以上も繰り返し自動走行したが、筆者が試乗したときのような事象は初めてだという。
冒頭で「実用化に向けて大きな一歩」と記載したが、こと公道での実証に関しては乗り越えるべき「山」が幾つも先にありそうだ。
沖縄で特徴的な交通事情をざっと考えてみても、「急な割り込みやウインカーを出さない車線変更がタクシーやバイクで多い」「運転初心者の観光客の方がレンタカーを使ってドライブする」「おじぃ(おじいさん)、おばぁ(おばあさん)が時折、自由気ままな運転をする」など、あれこれと頭に浮かぶ。こういった「リアルな公道環境」でいかに安全に自動走行バスを走らせるか、という観点の取り組みはまだ先となる。
今後、実験車両の開発を進める先進モビリティでは、「ブレーキ制御の自動化」と「障害物の認識精度の向上」を進めていく。「公共バスの自動走行に必要な技術材料はそろってきた。今後は、確実性や安定性、コストを実用レベルに上げていく」(先進モビリティ 代表取締役社長の青木啓二氏)という。
自動走行バスを公道で実証するという取り組みは始まったばかりだが、そこには地域における移動手段の現状をがらりと変える可能性と、大きな期待があることは間違いない。実証実験の出発式で、南城市に住む年配の方たちが、自動走行バスを見ながら楽しそうにおしゃべりしている姿と笑顔が印象的だった(図6)。
筆者からのメッセージ:「地方×モノづくり」で課題解決、魅力発掘!
エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や、魅力発掘の後押しとなる――。このような考えの下、「沖縄モノづくり新時代」と題した本連載では、沖縄という地方を例に、モノづくり/エンジニアリング技術を活用し、地方が抱えるさまざまな課題の解決に取り組む事例や、地方の魅力を掘り起こしていく事例に焦点を当てていく。
漁業や農業、林業といった第一次産業のみならず、観光・サービス業などさまざまな領域に深く関わり、地方の活性化を下支えするモノづくり/エンジニアリングの話題に注目してほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
沖縄モノづくり新時代
エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄だ。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー