沖縄モノづくり新時代(5)
エイサーの街で3Dモデリング/3Dプリンタ!? 沖縄の未来を創る“新しい風”(2/2 ページ)
沖縄で「モノづくり」をする2つの価値
本連載ではこれまで、「モノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や、魅力発掘の後押しとなる」というテーマを掲げてきたが、これを実現するには、知見を持った技術者の支援が欠かせない。
沖縄ミライファクトリーの管理人となった西村大氏も、東京や福岡を経て沖縄に移住した技術者だ。東京の第一線で働いていた技術者は、沖縄という地方都市にどのような魅力を感じ、移住してきたのだろうか。
西村氏は沖縄でモノづくりをする2つの価値を挙げた。
まず1つは、環境である。「東京では、オフィス環境を整えるのにだいぶ初期費用が掛かりますが、沖縄ではコストを抑えることができます。また、アイデアを出すには、適度な気分転換も必要です。沖縄には満員の通勤電車もありませんし、少し移動すれば白い砂浜のある海にも行けます。東京で長く働き、やり尽くしたと感じている技術者には魅力的な場所といえるでしょう」(同氏)。
もう1つは、ビジネスの展開先という観点である。「東京にいると、市場が大きいために、どうしても東京をベースにものごとを考えてしまいます。それでは、考え方が東京という“いち地方都市”に固まってしまうのではないでしょうか。これに対して、沖縄ではアジア圏を中心に世界各地を対象にしたモノづくりを進めやすいと考えています」(同氏)。
「沖縄でモノづくり」というと、どうしても東京をはじめとした首都圏との距離をデメリットに感じてしまう方も多いだろう。ただ西村氏は、今後場所にとらわれないモノづくりが広がっていくと語る(図4)。
「デジタル工作機械とさまざまなWebツールを活用することで、作り手同士の距離があろうとも、互いに連携し、1つのモノを作り上げられる“遠隔ハード開発”が可能な時代です。制作データはデジタルデータですから、Webツールで自由にやりとりしたり、修正したりできます。沖縄という場所をデメリットに感じることはありません」(同氏)。
新しい文化を受け入れてきた街「コザ」
最後に、コザという街でモノづくり分野のスタートアップ支援を始めたという意味についても触れておきたい。実は、コザという名称は沖縄の正式な市町村名ではない。1974年にコザ市が沖縄市へと変わったのだが、42年たった今でも「コザ」という愛称が広く使われている。
コザは、冒頭でも述べた通り、沖縄の中で特徴の際立った場所だ。米国から持ち込まれたハードロックの文化がいち早く浸透した街でありつつ、沖縄民謡やエイサーといった伝統芸能も盛んだ。沖縄には「チャンプルー(混ぜこぜ)」という言葉があるが、異質のものを自らに取込みつつも、独自の文化として発展させるという沖縄の特質がよく分かる街である。
オープン記念イベントの基調講演に登壇した、スタートアップ企業の支援を幅広く手掛ける孫泰蔵氏(Mistletoe代表取締役社長 兼 CEO)は、コザの街の雰囲気を「アーティスティックな街で、ポテンシャルのある環境」と表現した。
「頭の中にしかないアイデアを形にして世の中に打ち出し、それが尊重されるのがスタートアップの世界の魅力です。コザには、新しいモノを生み出してきた人を尊重し、愛する土壌がありますので非常に可能性がある場所だと感じています」(同氏)。
米国から始まったスタートアップ文化もコザという街で受け入れられ、沖縄の文化と混ざりながら発展していく――。スタートアップカフェ・コザのメンバーはそんな近未来を思い描いている。
彼らの活動は、「沖縄でモノづくりって……一体何するの!?」という、沖縄の現在の雰囲気を大きく変える可能性を秘めている。今後の活動に注目したい。
■沖縄のモノづくりが盛り上がるには!?:
これから先、沖縄ミライファクトリーを拠点に数多くの人がモノづくりに携わっていくためには何が必要だろうか? 筆者の主観ながら、2つの鍵があると考えている。
1つは、「心理的な抵抗感」をいかになくしていくかという点である。3Dモデリングや、3Dプリンタ、3Dスキャナーといった言葉だけを聞くと、とても仰々しく感じてしまうが、これらはアイデアを具体化するための「ツール」にすぎない。構えるのではなく、身近なツールとしてまず使ってみることが大切だろう。
また、心理的な抵抗感という観点では、沖縄で生まれ育ちモノづくり分野で事業を起こす人が、県外から移住してきた技術者に気後れすることなく、積極的に技術を学ぶという姿勢も大事かもしれない。
もう1つは、最も根本的で、“そもそも”ではあるものの、こんなモノを作りたい! というアイデアを持つ人を増やすという点である。沖縄は製造業に携わる企業や人口が他県に比べて比較的少ないこともあり、幼少期の教育の段階から「モノづくり」を身近に感じる機会が少ないように感じる。この点については、状況が少しずつ変わりつつあるので、また別の機会で触れてみたい。
筆者からのメッセージ:「地方×モノづくり」で課題解決、魅力発掘!
エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や、魅力発掘の後押しとなる――。このような考えの下、「沖縄モノづくり新時代」と題した本連載では、沖縄という地方を例に、モノづくり/エンジニアリング技術を活用し、地方が抱えるさまざまな課題の解決に取り組む事例や、地方の魅力を掘り起こしていく事例に焦点を当てていく。
漁業や農業、林業といった第一次産業のみならず、観光・サービス業などさまざまな領域に深く関わり、地方の活性化を下支えするモノづくり/エンジニアリングの話題に注目してほしい。
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沖縄モノづくり新時代
エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄だ。
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