沖縄モノづくり新時代(1)
パワードスーツの未来を開く! 沖縄初のロボットベンチャー「スケルトニクス」の今とこれから(1/3 ページ)
エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄。記念すべき連載第1回は、沖縄工業高等専門学校出身の若きエンジニアが立ち上げた「スケルトニクス」の挑戦について取り上げる。
「沖縄モノづくり新時代」と題した連載企画を持ち掛けられたとき、まず頭に浮かんだのがスケルトニクスのことだった。
同社が開発した外骨格ロボット「スケルトニクス」が、人の動きを大きく拡大させながら動く姿には圧倒させられる。「ニコニコ超会議」への出演を皮切りに、「NHK紅白歌合戦」やTVコマーシャルへの出演協力、国内外の各種イベントへの参加など、一気に世間の注目を集めた。読者の皆さんも何らかのメディアで彼らの外骨格ロボットを見たことがあるのではないだろうか。
同社を創業したのは、沖縄県辺野古にある「沖縄工業高等専門学校」(沖縄高専)を卒業した白久レイエス樹氏ら3人(図1)。「製造業不毛の地」といわれる沖縄から生まれた、“沖縄発”そして“沖縄初”のロボットベンチャーの話題は、新連載の記念すべきスタートを飾るのにピッタリだと考えたのだ。
ただ、同社に取材を快諾してもらったものの、2016年2月上旬に設定した取材先に向かう足取りは重たかった。なぜなら、2016年1月に同社の公式Webサイトで「エグゾネクスプロジェクト終了のご報告」という発表があったからだ。
「エグゾネス」とは、スポーツができる運動能力や時速40kmでの動歩行、時速80kmでの高速移動を目指した重量級パワードスーツの開発名称である。「まるでアニメの世界ではないか!」「何て途方もないものを作ろうとしているのか……」と感じる方も多いだろうが、彼らは真剣そのものだった。時間、資金、この1年間のほぼ全てをエグゾネクスの開発に費やしてきたのだ。
まだ世の中にカケラすらも見えていない、極めて難易度の高いプロジェクトであることは間違いない。「当初目標としていたスペックには及ばず、力不足を感じさせられた」「プロジェクトの完全達成には至らない結果」といった文字が並ぶ発表文を眺めながら、燃え尽きてやしないかと勝手ながら思ってしまったのだ。
彼らの開発工場は、東京都西部の高尾にある。高尾駅からバスと徒歩で約20分、周辺には畑が広がる。この場所で、沖縄出身の若き技術者が世間をあっと驚かせるロボットやパワードスーツの開発に熱中していると誰が思うだろうか。
工場で迎えてくれた同社代表の白久氏から語られる言葉は、淡々としながらも、とても力強いものだった(図2)。エグゾネスという重量級パワードスーツの開発を終え、次に見据える未来は? 「パワードスーツが使えないことが分かった」と語る真意とは? 新生スケルトニクスの今とこれからについて伺った。
アニメ/映画の世界に真剣に挑んでみよう――スタートは2012年
エグゾネスの開発プロジェクトが始動したのは、2012年1月のこと。思い立ったきっかけは非常にシンプルなものだった。
彼らが当時開発を進めていたスケルトニクスは人の力だけで動かすため、操縦者には相当な体力が必要で、しかも持ち運びが大変という代物だった。それならば、変形して自らが動いてくれるようなパワードスーツに挑戦してみよう! と考えたのだ。
取材の際、プロジェクトを開始して間もない2012年4月に作成した仕様書を見せてくれた。A4用紙に印刷された仕様書には、「スケルトニクスの負荷問題を解決すること。さらに、高みのある夢を目指す」「これまでの常識を覆すロボットスーツを開発し、アニメ、映画の世界を現実のものにする」と端的に記載されていた。「これまでの常識を覆す」とは、具体的には以下の6項目を実現することで、そこにはたくさんの夢が詰め込まれている。
- 誰もが乗りたいと思うインタフェース
- (人の動きに対する)拡大率2倍の外骨格
- スポーツができる程度の運動能力
- 立った状態での時速20kmでの移動
- 時速40kmでの2足動歩行
- 時速80kmでの移動(変形状態)
実現に向けたハードルは大きく2つあった。1つは開発資金を稼ぐこと、もう1つは“重量級”のパワードスーツを開発するという技術的な側面である。
「エグゾネクスを1日でも早く作りたいという気持ちはあったが、当時は20代前半で信用もお金もない。自ら資金を稼ごうと考えたものの、何せ創業メンバーの全員が機械工学科の出身で、ビジネスのやり方を知らなかった。そんな状況だったので、エグゾネスの開発というよりも、まず開発資金を稼ぎスタートラインに立つまでが試行錯誤の連続だった」(白久氏)という。
株式会社を設立した当初に作成した事業計画では、さまざまなマーケティング情報を収集した上で「スケルトニクスが1年間に100台売れる」と試算した。ところが実際に販売活動を始めてみると、全く売れない。結局、会社を立ち上げた後の2年間で、売れたのはわずか年間1台ペースだった。一方で、レンタル事業が予想外に伸びるといったことも起こった。
「プロジェクトの最初の仕様書には、エグゾネクスの開発資金は250万円と記載したが、今振り返ると全く足りていなかった。最終的に掛かった費用は正確にはお伝えできないが、トータルで数千万円規模になる。これらの資金は全てスケルトニクスで稼ぐことができた」(白久氏)。
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エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄だ。
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