沖縄モノづくり新時代(1)
パワードスーツの未来を開く! 沖縄初のロボットベンチャー「スケルトニクス」の今とこれから(2/3 ページ)
重量約560kgの1号機は完成したが、目標は達成できず
最終的に十分な資金が集まり、ようやく本格的な開発に着手したのが、2015年3月のことだ。プロジェクトが始動して3年が経過していた。
もちろん、2015年以前から基礎開発や部分的なパーツの試作を進めていたが、2015年3月に入り、開発拠点を八王子から高尾に移し、拠点のスペースを30m2から100m2へと拡大(図3)。いよいよパワードスーツ全体の本格的な開発に取り掛かった。
2015年は昼夜問わず、開発に没頭する日々が続く。2015年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2016」で白久氏は『スケルトニクス株式会社が展開する事業の説明』と題した講演に登壇しているが、このときがまさに開発の佳境だったという(関連記事:外骨格ロボットスーツは単なる序章、スケルトニクスの本当の夢とは?)。
上半身2回、下半身3回のプロトタイプを製作したが、1つのプロトタイプを製作するのに、気が遠くなるような試行錯誤があった。何度も何度も設計図を描き直し、試作を繰り返した。
特に難易度が高かったのが、時速40kmでの2足歩行だったという。現在世の中で開発されているパワードスーツの重さは1~6kg程度であるのに対して、エグゾネクスは重量が桁違いに大きい。高負荷を動かせるパワーのあるアクチュエータを制御する技術の難易度も高く、全体で取り扱うエネルギーも膨大になる。
最終的には高さ約3m、重さ約560kgという1号機を完成させたが、特に時速40kmでの動歩行、時速80kmでの高速移動という2つの仕様を十分に達成できなかったという。
「われわれの中でプロジェクト終了の期限を決め、開発資金を全て投入し試作を重ねて、1号機を作成させた。最後の最後まで絶対に目標を達成させると信じて開発を進めてきたので、『できない』という結論を出したのは、『負け』を認めることなので非常に悔しい。ただ、技術者として今後、どのように社会に貢献できるかという道筋も見え始めてきたところだ」(白久氏)。
現在のパワードスーツ市場が抱える大きな課題とは?
エグゾネクスは、そのまま何かに使える実用的なものではない。この1年、開発に膨大な時間と資金を投じた意義はどこにあるのだろか。
一言でいうと、パワードスーツに対する「知見」だという。「限りなく高い目標を置いた重量級パワードスーツの開発に真正面から向かったことで、今後、パワードスーツがどのように進化していけばよいのかという道筋を、確信を持ってつかむことができた」と白久氏は語る。
白久氏が、現在のパワードスーツ市場の大きな課題だと考えているのが、一般ユーザーがパワードスーツに対して抱く印象や期待と、実際の技術が大きく乖離(かいり)している点だという。
取材時に白久氏から「パワードスーツを着たことはありますか?」と聞かれたが、はたと考えてしまった。現在、パワードスーツを体験したことのある人は、ほとんどいないだろう。一般的なユーザーは、何かしらの情報で得た印象や期待でパワードスーツのことを語る。パワードスーツの用途を語るとき、どうしてもそうした印象や期待が先行してしまうのが現状だ。
白久氏らは、エグゾネクスのプロジェクトを立ち上げて以降、本体以外にも、等身大のものを含め、さまざまなサイズのパワードスーツを数多く試作してきた。自らが製作したものを実際に身に付けたり、さまざまなイベントや展示会で他社が製作したパワードスーツを体感したりすると、「これは実用的にどうなのだろう……まだまだ、使えない……」という印象を強く持つのだという。「この部分を解決すれば、実用レベルになるかもしれない――と深掘りすると、やればやるほど深みにハマっていく底なし沼のようなジレンマにぶつかった」(白久氏)。
現在、パワードスーツに対する一般的な期待がある段階にあるすると、その期待を十分に満たすための実際の技術は、まだそれよりも下に位置している。一般に期待されている段階に技術が追い付いていない。このことが冒頭で「パワードスーツが使えないことが分かった」と書いた意味だ。
今後はターゲットを絞った研究開発へ
しかし、現在は一般的な期待に対して技術の乖離があるにせよ、これから先、パワードスーツの可能性は十分にある。
白久氏が例に挙げたのが、自動車の自動運転の例だ。自動車の自動運転というと、目的地を入力すると後は自動で目的地まで到着するという姿をイメージしてしまう。ただ、現状では技術がそこに至っていない。現在は、障害物に急接近したら自動でブレーキがかかるという限定的な範囲で、自動運転は実用化されているとみることができる。
これと全く同じ話がパワードスーツにも当てはまる。映画『アイアンマン』のように空を飛べるものが最も遠い技術だとすると、その前段階には、例えばレスキュー活動に使える、自動車より速く走れる、スポーツができる、介護で年配者を楽に移動させることができる、日常の作業が少し楽になるといったように、実用の難易度レベルにはさまざまな段階がある。
「現時点でできること、できないことがある。その境目を見極め、ターゲットを絞って研究開発を進めることが重要だ。『ここまではパワードスーツでできる』『現状ではこの先はまだ難しい』というように理解が深まることで、どんどん世の中にプロダクトが普及していくのではないだろうか」(白久氏)。
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沖縄モノづくり新時代
エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄だ。
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