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» 2018年11月12日 09時00分 公開

製造業のIoTスペシャリストを目指そうSeason2(3):「パルスオキシメーター」の測定原理と注意点 (1/2)

製造業でIoTを導入したプロジェクトを成功させるには、幅広い知識が必要です。今回は、“デジタル処理のセンサー”に関連するお題として、血中酸素濃度を計測できる「パルスオキシメーター」について取り上げ、その原理や特長について解説します。

[IoT検定制度委員会,TechFactory]

パルスオキシメーターとは

 近年の健康志向の高まりと医療における検査の簡便化の流れの中で、血液を採取しなくてもできる手軽な血液検査が求められています。

 「パルスオキシメーター」は、日本で生まれた医療機器で1974年、日本光電工業の2人の技術者によって発明されたものです。図1のように、人差し指などを二股に分かれたパルスオキシメーターで挟み込むだけで、血中酸素濃度を計測でき、赤色光、赤外光を発生するLEDと、これらを受光するセンサーで構成されています。

パルスオキシメーターの構造 図1 パルスオキシメーターの構造

 血中酸素濃度を見ることで、呼吸により十分な酸素を取り込めているかどうかを判断できます。具体的には血液中、赤血球の中に多数あるヘモグロビンのうち、どれだけが酸素を捉えているかを計測します。

 この割合を「酸素飽和度」と呼び、全部のヘモグロビンのうち、酸素を取り込んでいるヘモグロビンの割合を示すものです。酸素飽和度は正常時、96〜99%ですが、90%を切ると「急性呼吸不全」と判断されます。

パルスオキシメーターの原理

 赤血球中のヘモグロビンは、酸素を取り込むと鮮やかな赤色になり、取り込んでいないと暗赤色になることが、よく知られています。赤色に見えるのは赤色光を吸収しなくなるからです。一方、赤外光は酸素を取り込んでも、取り込まなくても透過します。

 この光を吸収する特性を図2で説明します。

ヘモグロビンの吸光特性(波長依存性) 図2 ヘモグロビンの吸光特性(波長依存性)

 赤色光に相当する光の波長(660nm[*])のところでは、酸素を含まないヘモグロビンは光を吸収しますが、酸素を含むと吸収し難くなり、両者の間に吸収差が生じます。一方、赤外光に相当する波長(940nm[*])のところでは、酸素を含んでも含まなくても光を吸収し難く、そのまま透過します。

 そこで、図1に示すように、人差し指の表側に赤色光と赤外光とを同時に照射するLEDを設け、裏側に受光センサーを置いておのおの強度を測定すると、両者の吸光係数の差によって受光センサーに到達する光の強度に差が生じます。

* :100nm(100ナノメータ)=10-7m=10-4mm(1万分の1mm)

 すなわち、酸素を取り込んだヘモグロビンが多く通過したときは、赤色光の強度が弱く、赤外光の強度が強くなり、両者の強度の比が大きくなります。一方、酸素を取り込んでいないヘモグロビンが多く通過したときは、両者の比が小さくなります。この赤色光と赤外光との強度比を取ることにより、酸素飽和度を測定することができます。

 また、動脈では血液がドクドクと音がするように、血流に強弱があるので、この周期を測ることによって脈拍も測定できます。

パルスオキシメーターの用途

パルスオキシメーターのイメージ 画像1 パルスオキシメーターのイメージ

 パルスオキシメーターは、血液を採取して検査する必要がなく、手軽に血中酸素濃度を測定できることから、いろいろな用途に使われています。

 病院内では、さまざまな場面での患者の状態チェック、病院外では、救急車両への搭載、訪問介護や老人施設での高齢者などの健康チェック、さらに健常者向けでは、航空機会社の従業員の健康管理、スポーツ分野では、登山、高所トレーニング、低酸素室トレーニングなどと、その適用が広がっています。

パルスオキシメーター使用上の注意

 パルスオキシメーターは、誰でも簡単に扱え、測定精度も高いなど、良い点が多くありますが、使用環境や条件によっては、測定誤差が生じる恐れもあります。ここで、取り扱い上の注意を述べます。

 まず、使用環境では、周囲に電磁波を発生する医療機器やTV、携帯電話などの電化製品、ならびに、強い光を発する照明器具、赤外線ランプ、直射日光などが誤差の要因として考えられます。

 また、患者自身が持っているさまざまな内部疾患の中で、血中のヘモグロビンや色素に影響を与えるものがあり、誤差の要因になることがあります。さらに、患者自身が爪にマニュキュアなどを塗っていると、LEDの光を一部吸収するので正しく測定できません。

 これらの点を注意した上で使用すれば、人の健康状態を手軽に、かつ正確に把握できる有用なセンサーとなり、今後もその活用の場が広がることが期待されます。

今回の問題

 それでは、IoT関連の知識・スキルアップに役立つ問題をお届けします! 今回はIoT検定スキルマップの「デバイス−デジタル処理のセンサー」に該当する設問です(※)。

問題(1):

パルスオキシメーターに関する説明として“誤っているもの”を1つ選びなさい。

  1. パルスオキシメーターは、血中ヘモグロビンの赤色光の吸収度合を光センサーで検知している。

  2. パルスオキシメーターは、血中ヘモグロビンに含まれる鉄分が、血液流によって動くときに生じる磁界の変化を検知している。

  3. パルスオキシメーターは、脈拍数も計測できる。

  4. パルスオキシメーターは、他の医療機器などから発生する電磁波の影響を受けやすい。

※本連載の設問が実際のIoT検定にそのまま出題されるわけではありません。


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