IoT開発と運用の13問答、IPA/SEC「つながる世界の品質確保に向けた手引き」より:IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(10)(1/6 ページ)
とかく難解なIoT時代の組み込み系ソフトウェア品質を問う際、1つの指針となるのがIPA/SECのガイドブックである。今回はこの冊子を元に、「IoT開発と運用での13問答」を例示したい。
組み込み系ソフトウェアにおける「品質」をテーマに掲載してきたこの連載だが、今回は番外編として、2018年3月に公開されたIPA/SECの「つながる世界の品質確保に向けた手引き」を元に、IoTの品質問答を紹介する。果たしてIoTの開発と運用では、どんな問が投げられ、どんな答が返されるのか。
IoTはソフトウェアの世界を変えるのか
IoTの品質問答をする前に、「IoTとは何だろう」という疑問から始めたい。これはIoTがソフトウェアの世界を変えるのかという疑問にも通じる。
ある人は言う。「IoTはソフトウェアの世界を一変させ、従来のソフトウェア工学の再構築を求めた」と。別の人は言う。「いや、IoTというバズワードに踊らされているだけで、ソフトウェア開発や運用の考えは従来のものと大きくは変わっていない」と。このようにソフトウェア開発と運用、それに品質を考えるときIoTをどのように捉えるかはヒトやモノ、コトによってさまざまである。
IoTならではのもの
IPA/SEC(情報処理推進機構 ソフトウェア高信頼化センター)が2018年3月末に公開した、IoTの品質確保を目的としたガイドブック「つながる世界の品質確保に向けた手引き 〜IoT開発・運用における妥当性確認/検証の重要ポイント〜」(以後、SEC報告書)でも、「IoTならではのもの」が前提条件になっている。
しかし、この前提条件を満たすことは難しい。IoTもコンピュータシステムの1つであり、従来のコンピュータシステムの呪縛から逃れることはできない。IoT特有と思われるものでも、多かれ少なかれ、従来システムに古(いにしえ)より存在する。
だが「IoTならでは」を念頭に置かないと、普通のソフトウェア工学の教科書になってしまう。IoTと言えばセキュリティを前面に出す文献も多いが、それはIoT特有のものではない。もちろんセキュリティは重要であるが、それ以外にも、いろいろな「IoTならでは」があるのだから。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ソフトウェア品質向上のキモは「行動」にあり
製品とともに行動してこそ品質は変わる。行動することで、品質は製品の「おもてなし」になり、「究極の品質」でもてなすことができる。 - 間違いだらけの組み込み系品質管理、面倒な品質管理を楽しむコツ
ソフトウェアの品質管理はつらくて面倒だ。品質計測や品質制御は効果をすぐに実感できるが、品質管理の効果は後でしか得られない。「面倒だが後が楽になる」と分かってはいても面倒は面倒である。こんな品質管理を楽しくする方法はあるのだろうか。 - ソフトウェア品質は規則やテストではなく「ヒト」が作る
品質はヒトが制御する。機械でも人工知能でも神様でもなく、ヒトが品質を制御し、品質を作る。今回は視点を変えて、ヒトを中心に品質を見ていくことにする。どんなに立派な品質活動でもヒトが継続的に実施しなければ、いずれ絶えてなくなるからである。 - 上流工程の品質活動でソフトウェアの品質は向上するのか
品質を守る最後の砦が「テスト」であれば、品質向上の最強の武器は「上流工程での品質活動」である。しかし、この武器は効率的かつ小気味よく扱わねば、お飾りとなる。そこで今回はこの「上流工程における品質活動」について確認する。 - ソフトウェア品質のためにテストが「できること」「できないこと」
テストは品質を守る最後の守護者であるが、品質はテストだけで守られる訳ではない。しかしその関係は深く、テストは品質を導く水先案内人といえる。ここでは、テストが品質に対して「できること」と「できないこと」を説明したい。