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IoT開発と運用の13問答、IPA/SEC「つながる世界の品質確保に向けた手引き」より:IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(10)(2/6 ページ)
とかく難解なIoT時代の組み込み系ソフトウェア品質を問う際、1つの指針となるのがIPA/SECのガイドブックである。今回はこの冊子を元に、「IoT開発と運用での13問答」を例示したい。
IoTはソフトウェアの世界を変える
最初の疑問に戻ろう。IoTとはなんだろうか。果たしてIoTはソフトウェアの世界を一変させ、ソフトウェア工学の再構築を迫るのか。これに対して確実にいえることは「変える場合がある」である。しかしこれでは答えになっていない。ただ、IoTによって新たなソフトウェアの世界の波、新たなソフトウェア工学の波がやって来るのは確実であり、私たちはこの波に備える必要がある。
IoTならではの品質課題を整理する
IoTの品質を考えるため、「IoTならでは」の品質課題を整理したい。果たして、IoTにはどんな品質課題があり、それをどのように整理すればいいのか。まずはSEC報告書ではどのように整理したかを見ていこう。
SEC報告書では図に示すように委員から収集した100個の課題を5個のスコープと3個の観点で分類し、6個の抽象化した課題にまとめている。つまり分類軸としてスコープと観点の2次元を選んだのである。
このSEC報告書をまとめるときの議論がこちらで公開されている。もし興味と時間があれば、議論の途中経過も見てほしい。なぜその課題が選ばれ、その分類が採用されたかの理由を知る手掛かりになるからだ(ただし量が多いので読むには勇気がいる)。
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