産業社会におけるデジタル化の価値(1)
従来の常識を覆し、限界点を突破する「デジタル技術」の可能性(2/3 ページ)
デジタル技術によるデータ表現形式の進歩
皆さんもお気付きとは思いますが、このような課題解決のために、既に会社組織ではいろいろな情報技術を活用しています。メールを使っていない会社はほぼ皆無でしょうし、会計処理も何らかのシステムをお使いだと思います。
しかし、近年の目覚ましい技術進歩、特にネットワーク領域・計算処理能力、成形技術、センシング技術などによって、組織の「認識」⇒「判断」⇒「行動」に対する完全性を高めることができる――このことが昨今、製造業界でインダストリアルIoT、インダストリー4.0と語られている流れと深く関係しています。これは、会社組織はもとよりその業界を大きく変える、非常に幅広い話となりますので、今回はその中で以下の2点について述べます。
- モデルの概念による複雑性への対応
- 視覚化(ビジュアリゼーション)による認識能力の向上
1.モデルの概念による複雑性への対応
企画や設計初期段階では、新規製品について「対象顧客層」「対象市場(国内、北米、アジアなど)」「性能要件」「価格」「生産数」などの基本属性を決めていきます。技術的な観点では、この段階では当然詳細な各領域(電子電気、制御、ソフトウェア、メカニカル)の設計情報や実験結果がありませんが、その一方で、ターゲットとなる要件が本当に達成できるのか、そのためには技術的な構成要素をどのように組み合わせるべきか、ということを決めなければなりません。この段階で力を発揮するのが、インプットに対して振る舞い(またはアウトプット)が数学的に定義されているモデル表現を活用した「シミュレーション」です。この段階ではインプット/アウトプットともに時間の関数となる1次元量であることがほとんどです。
このようなモデルは抽象度を高くとることができ、電子電気、制御、ソフトウェア、メカニカルの各領域を統合した“システム”としての製品挙動、性能をシミュレーションできるメリットがあります。言い換えれば、実物の何千点という部品と多数の電子制御から構成される製品を、そのまま人間は理解/把握することはできませんが、上記のモデルという概念を駆使することで理解、判断できるようになる、ということです。このようなアプローチを「システムズエンジニアリング」と呼びます。
このモデルは、さまざまな詳細度において定義できます。つまり、既存の構成要素はそのまま流用し、未知のものは概略の情報を利用することで、製品全体の振る舞いを、その時点で可能な限り正確にシミュレーションできます(図4)。
また、開発が進むにつれ、より詳細に技術領域ごとに設計が定義されていき、モジュール単位の実験結果なども得られるようになります。そのようなプロセスは、図5のV字モデルとして定義されます。
つまり「上」⇒「下」は設計の詳細度、「製品」⇒「部品」(部品とはメカ、電気電子、ソフトウェアなど全領域の構成要素のこと)を表し、左側は計画段階、右側は実施/テスト段階を表しています。右側が意味するところは領域によってやや異なります。例えば、物理的な部品やモジュールの場合は3Dシミュレーションおよび実験、ソフトウェアなら単体/統合テストなどです。いずれにしても右側も上部に行けば領域間をまたぎ、製品(システム)として検証される必要がありますし、右側の情報は左側の計画段階のモデルにフィードバックされることで、モデルの定義を改善し、次回の開発に役立てることが重要です。
モデルを活用したシミュレーション、システムズエンジニアリングは、近年のモノづくりのトレンドで、その分野ではよく知られています。しかし最近の注目すべき点としては、やはりセンサー技術/データ収集機器の向上でしょう。これにより、実験を含む物理現象の把握レベルが飛躍的に向上しました。このことがシミュレーションモデルの精度の向上をもたらし、初期段階からの性能予測に大きく貢献できるようになりました。もちろん、コンピュータ計算処理能力の向上によって、複雑に多層で定義されたモデルを短時間にシミュレーションできるようになったことにも注目すべきです。車両ダイナミクスのシミュレーションには非常に重要な要素となります。
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産業社会におけるデジタル化の価値
「デジタル化」とは何か? デジタル化が産業社会にもたらす変化と価値について、全4回で解説する。
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