太陽光パネルメーカーのハンファQセルズジャパンは、住宅向け太陽電池モジュールの新製品を2017年2月から販売する。効率を高めた新製品を投入し、売電から自家消費にシフトすると見られ、国内の住宅太陽光市場でシェア拡大を目指す方針だ。
太陽光パネルメーカーのハンファQセルズジャパンは2017年1月25日、東京都内で会見を開き、住宅向け太陽電池モジュールの新製品を2月から販売すると発表した。効率や発電量を高めた新製品を投入し、売電から自家消費にシフトするとみられる、国内の住宅太陽光市場でシェア拡大を目指す方針だ。
今回発表した新製品は3種類で、単結晶のPERC(Passivated Emitter and Rear Cell)構造。1つ目が住宅向けの主力製品となる60セルの「Q.PEAK-G4.1」シリーズだ。外形寸法は1000×1670×32mm(ミリメートル)、出力は300W(ワット)で、モジュール変換効率は18.0%、1枚当たりの重量は18.8kg、希望小売価格は税別18万9000円。
2つ目がより小型のモデルで48セルの「Q.PEAK S-G4.1」だ。外形寸法は1000×1348×32mmで、出力240W、モジュール変換効率は17.8%、重量は15kg、希望小売価格は税別15万3600円。どちらの製品も従来モデルと比較して出力を109%高めたという(図1)。3つ目は景観対応向けでバックシートを黒色にしたモデルの「Q.PEAK BLK-G4.1」である。こちらは60セル、出力290Wで受注生産となる。価格は税別で18万2700円。
日本国内の太陽光発電の買い取り価格は下がりつつある。2017年度の住宅用の買い取り価格は前年度から3円減の28円となる見込みだ。こうした環境変化により、住宅用太陽光の利用目的は、これまでの売電を目的とした発電から、自家消費へとシフトしていくと見られる。
同社 エネルギー事業本部 PVシステム事業部 執行役員 事業部長の東洋一氏は「自家消費への動きに対し、パネルメーカーが貢献できるのは、より性能が高く、さらにコストメリットの高い製品を提供すること。これにより、住宅用太陽光のトータルコストを下げられるようにしていくことが必要になる。今回の新製品はこうした背景に沿って開発し、市場投入するものだ」と述べる。
同社が性能面での強みとするのが「Q.ANTUM」という技術だ。太陽電池セルの裏面に機能性ナノ薄膜(誘電体)を形成する技術で、セルに入射した太陽光を裏面で反射し、再度セル内に向かわせることで発電効率を高められる(図2)。
しかしPERC構造のセルの場合、初期のセル内部の構造変化によって出力が低減する現象(LID)が起きることがある。同社では今回の新製品のうち、Q.PEAK-G4.1にこうした出力の低減を抑える「Anti-LID」という独自開発の新技術を採用。これにより初期の出力の安定化や、長期に発電量を維持しやすくするなどの改良を加えた。
なお、価格面については「競合製品より30〜40%程度安く提供できるのではないか」(東氏)としている。また、実際の提供時にはモジュールだけでなく、パワコンやモニター、金具や架台、保証など、必要な付帯製品・サービスに複数の選択肢を用意し、ユーザー側が最適な組み合わせを選べるようなかたちで提供していく。
ハンファQセルズジャパンは、韓国ハンファQセルズの日本法人で、2011年から日本の太陽光発電市場に参入。2016年12月時点で国内における累計モジュール出荷量は2.7GW(ギガワット)となり、販売パートナーは500社、全国450カ所にサービス拠点を置いている。2016年は約700MW(メガワット)の出荷実績があり、2017年も同等の販売量を見込んでいるという。
住宅太陽光では、国内で累計2万カ所の設置実績がある。なお、同社の2016年の出荷量700MWのうち、約25%が住宅および低圧向けとなる。今回の新製品の投入などで、今後この割合を30〜40%程度まで高めたい考え。
また、住宅太陽光の自家消費シフトが進むとともに注目されるのが、蓄電池の活用だ。現在ハンファグループ自身は蓄電池の開発は行っていないが、ハンファQセルズジャパン 代表取締役社長の金鍾瑞(キム・ジョンソ)氏は会見後の囲み取材で、日本市場に蓄電池を投入する考えがあることを明かした。「現時点で蓄電池を自社開発するといった具体的な内容は決まっていないが、2017年内に何らかの発表ができるよう準備を進めている」(同氏)。
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