大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ウルトラ高性能な「Apple M1 Ultra」の謎(4/4 ページ)
なんでこの方式を使ったと筆者が考えているか? というと、Photo02の赤枠部は多分これインターポーザ用ではない、と考えられるからだ。要するに大きすぎるのである。そもそもインターポーザを使う場合、信号の電圧はかなり低く抑えられるのがメリットである。とはいっても例えばTSVほどには下げられないのだが、送受信を行うPHY(物理層)はかなり小さい。TSMCのCoWoSを使う製品は現在非常に多いが、そのCoWoS用のPHYにこんなに面積を割いている製品は他に見たことがない。単に幅広いだけではなく、縦方向にも長いのが特徴的である。なにせ面積で言えば、黄色い枠で囲ったLPDDR5 256bit(32×8)用のPHYよりもデカいのだから、これは相当なものである。インターポーザ方式のメリットの一つは巨大なPHYが必要ない事なので、どう考えてもこれはインターポーザではない。
ではこれは何か? 筆者は、これはCPU接続用の高速Interconnect用のPHYだと考えている。そしてM1 MAXでは恐らくこのInterconnectは使わず、前ページで示した特許の仕組みを使って2つのチップを接続していると考えている。ではこのInterconnectは? というと4チップ以上の接続用であろう。Intelで言えばUPIとかMDI(Multi-Die Fabric IO)、AMDのInfinity Fabric、NVIDIAのNVLinkなどにあたるものだ。これが図6の様に接続される形になる。LPDDR5の配されているパッケージの下を、相互接続用Interconnectが走る格好だろう。こうしたInterconnect用、と考えればこの謎のエリアの大きさも納得がいく。
この方式の問題は、メモリ容量である。M1 Ultra1個当たり128GBだから、4つ並べても512GBでしかない。一つの解は、こうした大容量向けにメモリベンダーが頑張って、32GB LPDDR5を投入する(これによりメモリ容量が倍になる)というもの。もう一つは、このInterconnectの先に、メモリコントローラのみ載せた、いわゆるMemory Hub的なものがぶら下がる可能性だ。LPDDR5チップの場合発熱が非常に小さいからスタッキング、つまり複数のメモリチップを積み重ねる事も現実的である。図7は2段スタッキングしたMemory Hubを両側にぶら下げた例だが、この構成ならMemory Hub当たり256GB、システム全体で768GBになる。4段スタッキングならMemory Hub当たり512GB、システム全体で1.25TBほどになる。つまり、方法としてはいろいろやりようがある訳だ。
実際のところどうなのか? というのは神のみぞ知るという話だが、一応こうした構造が考えられるという一つの仮説を今回はご紹介した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー