大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ウルトラ高性能な「Apple M1 Ultra」の謎(3/4 ページ)
さて、CoWoSなどのインターポーザの問題は何か? というとスケーラビリティである。山川晶之氏も指摘しておられたが、3チップ以上のM1 Maxをどうつなげるんだ?という話がある。実はパッケージサイズを度外視すれば、チップを90度回転させてつなぐM1 Hyper(仮)みたいな離れ業は不可能ではない(図5)。まあこれでもメモリ容量の問題は解決しないし、この構造そのものを別に筆者が信じているわけではない。
ということで本題。Appleは2020年に“High Bandwidth die to die interconnect with area reduction”という特許、それと2022年には“Wafer Reconstitution and die-stitching”を取得している。今回、M1 Ultraにはこの後者の特許が使われているのではないか? という気がしている。
この特許はどんなものか? というのがこちら(Photo04)。左が従来のインターポーザを使ったマルチチップの実装例、右がAppleの特許による実装例である。
Fig 1とFig 3は、単に2つのチップの直近だけをつなげる方法、Fig 2と4はチップの上にビルドアップ配線層を積層する例である。さて、Appleの特許文書によれば、インターポーザ方式の欠点として
- インターポーザの実装中は微粒子が混在すると接続問題が出やすいので、インターポーザの接続時には厳格な環境制御を維持する必要があり、コストが高くつく
- インターポーザを別途必要とするため、コストが上がる
- 高さを合わせるための酸化物ギャップ充填剤(図中の130番)とシリコンの熱膨張率が異なるため、温度が上がると変形しやすい。また酸化物ギャップの形成には時間がかかるため、これもコスト増につながる
といった項目が挙げられている。
ではAppleはどんな構造を導入したか?という話だ。特許文章の中ではいくつかのパターンが示されているが、一番簡単なもの(Photo05)の場合、
- 複数のチップをキャリー用ウェハ上に並べる(Fig.9A)
- ギャップフィル材料130を充填するなどして、高さをそろえる(Fig.9B)。場合によっては、高さの高い方のダイを削ることもここではあり得るとしている(CMP研磨を行う、とする)
- ひっくり返す(Fig.9C)
- キャリー用ウェハを削った上で、配線層を構築する(Fig.9D)
- 完成(Fig.9E)
という仕組みだ。
要するにここで言えば100と110という2種類のチップを製造した後で、それをもう一度配線工程に戻してあらためてチップの上(というか、下というか)に配線を積層するという、「インターポーザとどっちが安いんだろう?」という構造であるが、そもそもこのやり方なら
- インターポーザよりも一桁多い配線密度が実装できる(理由:MicroBumpもHybridBumpも要らないから)
- Bumpを挟む場合、ESD(静電気破壊)対策のためにちょっとしたクランプ回路を挟む必要があるが、この方式ならそれすら要らない
といったメリットがある。
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