大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
IntelがIDM 2.0を掲げざるを得なかった理由(2/4 ページ)
これはその他のFoundryも同じことであって、なのでFab Liteは可能かもしれないが、Fablessモデルに移行することは不可能である。とはいえ、例えば先端プロセス開発からは撤退し、浮いた資金をFoundryに投資をして優先生産枠を確保するなんて戦略も不可能ではないから、IDMモデルを見直すことでIntelの長期的な存続を確実にするとともに株価を引き上げたいというファンドの意見はそれなりに説得力がある。
残念ながらSwan氏はファンドのこの意見に対し、明確な回答を出すことができなかった。それでも、Intelのリソースを温存しながら、その回答を出せる後継者にバトンタッチしたという点で氏のCEOとしての成績に及第点はあげられると思う。もともとはCFOとして入社し、2018年6月にあくまで中継ぎ(Interm CEO)としてCEO昇格を引き受けたのに、取締役会がこの時点で後継者を見つけられず、2019年1月にPermanent CEOに昇格したという事情を考えれば、こうした大胆な決断を下せなかったのも無理もない。
さて、そのSwan氏に代わってCEOを引き受けたGelsinger氏は、就任1カ月そこそこでIDM 2.0のビジョンを発表している。IDM 2.0というのは
- 引き続きIntelは独自のプロセス技術の開発を進め、これで製品競争力を高める
- それとは同時に、外部のFoundryも柔軟に利用できるようにする
- さらに自社のFoundry Serviceを本格的に展開する
の3本柱からなるが、要するに
(a) 引き続き自社プロセスの開発は続けるとともに、自社製品は自社生産の原則を維持する
(b) ただ現実問題として現在利用できるプロセスはTSMCなどにビハインドを負っている。なので、自社プロセスが成熟するまでの間は、特に先端製品に関してはTSMCなどのFoundry Serviceを併用する
(c) 2024~2025年以降は、現在行っているFabへの追加投資や新規投資により、生産能力が大幅に拡充される。このタイミングで他社に負けない先端プロセスを利用できるようになれば、Intel社内のニーズ以上の生産能力を手にすることになる。この過剰分は、Foundry Serviceとして外部に提供する
ということになる。要するにファンドの意見に対して、従来路線を変えないという返答であり、ヨーロッパ拠点まで考えると300億ドルを超える投資を行うというあたりは、少なくとも「経営トップはIntelの将来に関して明確なビジョンを持ち、かつこれに向けて社内を牽引してゆく覚悟がある」という明確なアピールになったと思う。
ただ問題は、本当にこれが実現できるかどうか? である。取りあえずProduct PipelineとTechnology Pipelineのどちらも、Gelsinger氏があれこれいじれるのは2024年以降ということになる。こちらの村尾氏の記事にある表が分かりやすいと思うが、2021~2022年のAlder Lake/Sapphire Rapidsや2023年のMentor Lake/Granite Rapidsは、もうGelsinger氏が就任する前から出荷に向けて進んでいた製品で、これに使われるIntel 7(旧10nm Enhanced SuperFin)やIntel 4(旧7nm)も、やはりGelsinger氏就任前から量産に向けて準備が進んでいたものである。つまりGelsinger氏がどうこうできる話は、早くて2024年投入の製品ということになる。この2024年以降でどういう方向性を打ち出してくるのかというのは、それはそれで興味深いものがあるのだが、それ以前に「そもそも2024年までのロードマップを本当に実現できるのか?」という根本的な問題について、明確な回答がないのが現状である。
おそらく今月末~来月あたりから、Intel 7の量産が始まる。このIntel 7は現在量産に利用されている10nm SuperFinのアップデートバージョンであり、これは余程の事がなければ無事に立ち上がるだろう、とみられている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー