大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
世界的な半導体の生産量不足、その原因と影響(3/3 ページ)
リードタイム増加、納期の大幅順延
要するに生産ラインはどこもかしこも一杯、という状況が続いている訳だ。この結果何が発生したかというと、リードタイムの大幅な順延である。筆者が聞いている範囲でいえば
- MCUやパワーIC、Audio Codec、パワーモジュール、GPUチップ、Wirelessチップ:以前は8~12週(2~3カ月)だったリードタイムが24~52週(6~12カ月)
- Logic ICやAnalog IC、ASIC、電源用MOSFET、受動部品などの類:以前は8~12週(2~3カ月)だったのが、20~24週(5~6カ月)
- LCDパネル:以前は6~8週(1.5~2カ月)だったのが、16~20週(4~5カ月)
- CPU:以前は8週(2カ月)だったのが12~20週(3~5カ月)
- Memory/SSD:以前は6~8週(1.5~2カ月)だったのが、14~15週(3~4カ月)
- PCB:以前は2~4週(0.5~1カ月)だったのが、8~12週(2~3カ月)
といった数字になっている「らしい」。厳密に言えばこの数字、メーカーによって当然異なってくる。例えばMCUを例にとると那珂工場が復旧するまでフル生産に入れないルネサスエレクトロニクスと、全量を生産委託しているNXP、一部製品を自社で製造しているTIでは当然品種ごとにリードタイムは変わってくるからだ。とはいえ、大きなトレンドとしてみるとリードタイムが大幅に増えているのは間違いない。特にMCUとかWirelessなどのひっ迫は著しく、最大52週とかいうのは要するに今発注しても来年までモノが来ない、ということになる。
これは当然ながら半導体を利用して最終製品を作る全てのメーカーに影響を及ぼすことになる。今も半導体メーカーはさまざまなMCU製品を毎月のように発表し、サンプルや量産出荷を始めているが、1000個くらいならそう長くない量産品のリードタイムも、10万個とか100万個になった瞬間に「納期未定」が返ってくるという、これまであまり経験した事のない状況になっている訳だ。こうなると大量に生産・出荷を予定していても、実際には部品が入手できないために大量出荷はおろか大量生産に入れず、生産量を減らして細く長く生産するか、もしくは必要な量の部品がそろうまで量産開始を待つか、という厳しい選択を迫られることになる。
半導体におけるこの状況が問題なのは、マスクとかトイレットペーパーと異なり、そうそう簡単に生産量を増やせない事だ。既に稼働率は十分に高い、というか主要なファウンダリはいずれもフル回転で操業しており、もうこれ以上生産量を増やす方策は短期的には存在しない。長期的にはFabを増やすという形であり、例えば2021年4月2日にTSMCが向こう3年で1000億ドルの設備投資を行うと報じており、早ければ2023年あたりから少しずつ生産量は増えていくかもしれない。またTSMCは2020年5月、アリゾナに月産2万枚のFabを建設すると発表したが、2021年3月に最近この計画を上方修正し、2万枚製造のFabを6つ建造すると報じられている。これが事実であれば、1000億ドルの一部はこの建造に費やされることになるが、こちらは2024年の量産開始を目指しているから、短期的な解決策にはならない。そして2024年まで待っている間に、さらに半導体の需要が増え、この新Fabがフル稼働してもやっぱり需要を満たせないという可能性は低くないだろう。
残念ながらこの問題は半導体製造企業の側で解決するのは難しい。「あまり半導体を使わない最終製品を作る」という、ちょっと先祖返り的な動きが今後活発になっていきそうに思えるのは、ちょっと残念なことである。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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