大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
世界的な半導体の生産量不足、その原因と影響(2/3 ページ)
大手メーカーによる半導体“買い占め”
そうでなくてもサプライチェーンのゆとりがなくなっている状況で、こうした突発事項が頻発した場合何が起きるか、といえば「大手メーカーによる早めの調達」である。状況を見極める暇があったらまずブツを確保しとけという話なのであるが、これは言ってみれば2019年の今ごろに発生した、マスクや消毒用アルコール、さらにはトイレットペーパーまでに及んだ買い占めと在庫の払底によく似ている。よく似てはいるのだが、実は半導体の方が事態は深刻である。マスクなり消毒用アルコールなりは、一時的な流通在庫の払底が切っ掛けになってパニック買いが発生した(この際に転売屋が横行した事が拍車を掛けた)ものの、基本的には生産は足りているから、時間を掛ければパニックは収まるはずだし、事実収まった。もう最近はマスクに気が狂ったような値段が付くこともないし、アルコールも普通に購入できる。
ところが半導体の方は、そもそも生産量がギリギリというかやや不足気味であった。先端の5~7nmあたりはサーバとPC、スマートフォンに加え最近は自動運転とかADASなどの車載向けで取り合い。16~28nmのメインストリーム向けは、さまざまな情報家電向けとか最近だと家庭/SOHO向けネットワーク機器などでこれも取り合い(最近は自動車向けEUCがこの28nmあたりを使う機会が増えてきて、それもあってひっ迫している)。40~90nmはMCUなどで多く利用されるが、そもそもIoT機器が増えたり、SmartXXみたいな形でMCUを使う用途が増えてきた。自動車にしても、以前より細かな自動化が進んだ≒それだけMCUが入る数が増えたという意味だし、Wireless機器のRFもこのあたりのプロセスを使うから、Bluetoothなどのヘッドフォンが増えるとそれだけRFモジュールも必要になる。かくしてここも取り合いである。
もっと古い130nmとか180nmあたりになると、流石にロジックデバイスでこれを利用するケースは減りつつあるが、パワー半導体ではこのあたりもまだ現役だし、さらに言えばこのあたりの需要はむしろ増えつつある。背景にあるのは電力需要を少しでも抑えるためにはモータの消費電力を抑える必要があり、そのためにはBDLC化とか高度なモータ制御が要求される。その際にはパワー半導体が必要という訳だ。おまけにヨーロッパが自動車のEV化を決めてしまった事で、EVやHEVなどに向けたパワー半導体の需要が急激に増えつつある。
その他では、FD-SOIもまた恐ろしく需要が高い。特に5G基地局や5G端末でもミリ波向けのRFにはCMOSよりもFD-SOIの方が特性が優れていることもあり、5Gのサービス開始に伴いこちらの需要も急速に盛り上がっており、それもあって例えばGlobalfoundriesは2020年11月にSOITECと更なるFD-SOIウェハの供給契約を結んだりしている。これに加え、自動運転をオプションで提供する車が増えてきたことで、ミリ波向けの新しい需要が喚起されており、それもあって(FinFETの生産が厳しいのを避けるために)FD-SOIに逃げるという選択肢も、同様にかなり厳しくなってきた。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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