大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
AMDによるXilinx買収、両社のメリットと思惑(3/3 ページ)
Xilinxの思惑は?
このように(1)~(4)あたりはぱっと思いつくメリットである。多分こうしたメリットを勘案すると、350億ドルはそう高い買い物ではないだろう。他方Xilinxにとってはどうか? というと、少なくともAMDに買収されることでのビジネス上でのメリットは薄いだろう。AMDに買収されてしまうと、それ以外(IntelとかArmベースのCPUベンダー)とのビジネスはやりにくくなるだろうし、長期的な戦略は当然AMDの意向に沿う事になる。従ってXilinxの経営陣からすれば、買収を受諾する理由は株主への義務ということになる。要するに上場会社である以上、株主が納得するだけの価格で買収提案がなされ、かつ自社のビジネスがその後も継続するという見通しがあれば、買収提案を拒否する事は難しいということになる。実際143ドル相当という金額はかなりのプレミアではあるが、この後さらに価格が上がる可能性が見えていた。図2は原稿執筆(2020年11月10日)時点でのAMDの株価の推移であるが、2020年1月ごろは50ドル前後だったAMDの株価は、IntelがQ2の決算にあわせて7nmプロセスの遅延を発表した途端に80ドル近辺まで急騰。Xilinx買収を発表した翌日の10月28日は76.58ドルとやや下げたものの、その後また85ドル近くまで戻している。
長期的に見れば、少なくとも買収完了までAMDが大きく株価を下げる事は考えにくいし、むしろもっと上がる可能性すらある。これはそのまま買収金額が自動的に引きあがるという意味でもある。既に現時点でXilinx1株当たり146ドル強での買収になっており、さらに上がる可能性があるとなると、なかなかこれを拒否するのは難しいだろう。
その意味ではAMDにとって、この買収は千載一遇のチャンスだったともいえる。もちろんAMDは自力で売り上げを増やしており、決算の数字は大変に優秀なものではあるが、これに加えてIntelが特に10/7nmプロセスで遅延を繰り返しており、売り上げはともかくとして先の見通しが立たないことを嫌った結果、株価が暴落した事の反動という面もある。もしAMDが50ドル近辺の株価であったら、株式交換での買収はXilinx 1株がAMD 3株と交換とかになりかねず、これはディールが不成立であった可能性がある。なので現実的には現金+株式交換の形になるが、これはやっと減らしたAMDの長期有利子負債を再び増やすことになりかねない。株価が高騰している今だからできた芸当ともいえる訳で、皮肉ではあるがIntelのおかげでこの買収提案が受諾されたということになる。
NVIDIAによるArmの買収と異なり、この買収は比較的冷静に業界でも受け止められている。まだ成立する/しないを論じるには時期尚早ではあるのだが、成立したら面白いことになりそうではある。
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