大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
SamsungがAMDからGPU IPをライセンス取得したワケ(1/2 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回は、2019年6月の業界動向の振り返りとして、SamsungがAMDからGPU IPをライセンスを取得した件を紹介する。
2019年6月で一番大きなインパクトがあったニュースは、恐らくはInfineonによるCypressの買収、次がルネサスエレクトロニクスの社長交代というあたりではないかと思うが、これらは既に何本かの解説記事があるので見送らせていただくとして、ちょっと面白いニュースを取り上げたいと思う。
2019年5月末から台北で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2019にあわせて米AMDは同社の第3世代Ryzen CPUと、Radeon RX 5700シリーズGPUの詳細を発表したが、この1週間後にそのAMDは興味深いリリースを出した。その骨子は、
- AMDはRDNAアーキテクチャ(今年発表されたRadeon RX 5700シリーズに採用されている最新のGPUアーキテクチャ)をベースとしたGraphics IPをSamsungにライセンス供与する。
- SamsungはこのGraphics IPを、SmartphoneやTabletを含む、「AMD製品と補完関係にある」製品に採用する。この代償としてSamsungはAMDにライセンス料とロイヤリティを支払う。
となる。なぜこんなディールが成立したのか? を今月は考察してみたいと思う。
AMDの側は実は分かりやすい。CPUもそうだが、GPUのIPコアを開発するのは決して容易ではなく、なのでなるべく多くの製品展開を行ってコストの回収を図りたいというのは当然の事である。写真1は2018年1月のCESでのものだが、Gaming PC向けやApple向け(これは標準のGPUカード)だけでなく、XBox One/PS4(これらはセミカスタム)、Atari VCS(これはRyzen Embedded R1000を利用)とIntel(カスタムGPUダイを供給)と幅広く製品展開を行っていた。
ただMobile、要するにスマートフォン/タブレットのマーケットには足掛かりが存在しなかった。これが今回の提携により、いよいよMobile向けにも足掛かりができたことになる(写真2)。
また、かなり早い時期からRDNAアーキテクチャはAMD以外のメーカーに対してIP供給を考えていた節も見受けられる。写真3はRDNAアーキテクチャのキャッシュ周りの概要をまとめたものだが、ホストとの接続がPCIe(これは描画コマンドの発行とかテクスチャデータの転送などに利用される)と、SoC Fabric(メモリおよびDisplay Engineを接続)の2つから構成されているのが分かる。
これがAMDのみの利用であれば、同社はInfinity Fabricという独自のSoC Fabricを広範に利用しており、実際RDNAについても内部はInfinity Fabricで構成されている。なので、Memory ControllerにしてもDisplay Engineにしても、本来ならばInfinity Fabricを利用した方が話が楽である。にも拘わらず、あえて汎用(恐らくAMBA 4/AXI 4ないしAMBA 5/AXI 5互換が可能であろうと考えられる)I/Fとしたのは、Infinity Fabricを利用しないSoCとの接続を考慮したため、としか考えられない。このあたりはグランドデザインレベルで考慮する必要があるポイントなので、恐らくRDNAは(その時点でSamsungへのライセンスの話が出ていたかどうかは別に)当初から外部へのIP供給を考慮していたものと考えられる。要するにAMDとしてはRDNAのライセンスは既定路線であり、無事にSamsungという顧客も捕まえる事ができた、という状況と考えられる。そして現在のSamsungの製品ラインアップを考える限り、AMDの製品群とぶつかるもの(例えばDiscrete GPUカードなど)を開発する恐れもない。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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