大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
SamsungがNVIDIAの7nm EUVを失注/5nmレースの行方(3/3 ページ)
一方Samsungは、単に失注したと黙ってみている訳にはいかない。NVIDIAほどではないにせよ、IBMのPOWERとかZシリーズのプロセッサもまた、結構なダイサイズである。ここでYieldが十分上がらないとなると、IBMの契約すら危なくなるからだ。しかも7LPPの技術はこの後、5nmのEUVにも当然使われていくから、ここで解決しないと後々尾を引くことになる。
それにしてもすごいのは、NVIDIAの布石であろうか。最近は物理設計に1年とか掛かるのが普通だから、少なくともNVIDIAは1年以上前にTSMCのN7も使う、という決断をしたことになる。Ampereクラスになると、物理設計の費用もプロセス当たり10億円では効かないレベルだである。もともとNVIDIAがDual Fab Strategyを取る、という話は聞こえていた。つまりSamsungだけに頼るのではなく、TSMCも使うという話であるが、これはダイサイズが大きくなる(=マスクコストが上がる)ハイエンドは(マスク枚数が減らせる)SamsungのEUVで、ダイサイズが小さいローエンドはTSMCのArF液浸+マルチパターニングで、という意味と捉えていた。ところが実際にはハイエンド向けに両方のプロセスを利用して設計を行い、製造結果を見てSamsungを切るという判断がくだされた訳で、よくそれだけの費用を突っ込んだものだという気もするが、800平方mmクラスのチップを作るとなると、その位の用心が必要ということかもしれない。
余談であるが、NVIDIAは7nm世代の繰り返しにならないように、既にTSMCに5nm世代の製造予約を大量に入れているという話もある。5nmについては、まずAppleがN5プロセスに大量の製造予約を既に入れているはずで、現在はその次のN5Pプロセスの受注をそろそろ開始、というあたりであるが、NVIDIAがN5とN5Pのどちらに予約を入れたのかは不明である。ただここまで前倒しで予約をしないといけないほど、TSMCの供給はひっ迫しているという訳だ。
5nmレース
そのSamsungは、同社の平澤事業所内に新しく5nmプロセス専用ラインを建設化し、2021年後半に量産を開始する予定であることを2020年5月21日に発表した。同社は既に華城事業所内にEUV専用のV1 Fabが稼働中であり、現在は7nm EUVプロセスで利用されているが、今年後半にこちらで5nm EUVプロセスも稼働する。今回の発表はこの華城事業所のEUV V1に追加して5nm EUV専用Fabを稼働させることを意味する。
一方のTSMCは、アリゾナ州に5nm専用ラインを追加することを発表した。こちらはウェハ処理能力が月産2万枚とそれほど大きくなく(TSMCの場合、月産10万枚のGIGA Fabが主力であり、2万枚はその下のMEGA Fab扱いである)、また稼働開始も2024年と遅いあたりは、高まる5nmへのデマンドに対応というよりは多分に政治的な側面が強い(それ故こういう話も出てくる)が、相次いで5nm向けの設備投資の話が出てくるというのは、もう競争は7nm世代ではなく5nm世代に移っているという話である。Intelで言えば7nm世代がこのTSMC/Samsungの5nm世代とほぼ同じなので、ここで再び三つ巴の争いになる訳だが、そのIntelの7nmの話が全く聞こえてこないあたりが非常に不安な気持ちになるところである。
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