宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(37)
「サプライチェーン攻撃」対策、その根本を考えて今すぐ検討すべき(2/2 ページ)
上記は「ITサプライチェーンにおける情報セキュリティの責任範囲に関する調査」において、責任範囲が明確にならない理由を委託元、委託先それぞれに聞いた結果です。委託元のスキル不足という回答もさることながら、大変興味深いのは、委託元は「責任範囲を明確にしてしまうとそれ以外の対応が期待できない」、そして委託先は「責任範囲を明確にしてしまうとコスト増を受け入れてもらえない」という回答が目立った点です。要するに、曖昧さを残しておかないとビジネスが進まない、できればいろいろやってよと思う委託元と、取引の立場上出しゃばると契約を結んでもらえないと考える委託先のデッドロック状態が、日本のサプライチェーンをITセキュリティ的に弱くしているというのが現状のようです。これは、解決には時間がかかりそうですね……。
サイバー攻撃は待ってくれない……今すぐできることってないの?
契約を巡る話は、日本の商習慣に深く関係してしまうため、数年レベルで変えることは難しそうです。ですので、サイバー攻撃者にはその準備ができるまで、日本をターゲットにしないでもらいたいところですが、現状は逆です。弱いと分かればそこを狙わない理由はありません。そう考えると、10大脅威の“第4位”というのも、かなり保守的な順位なのかもしれません。
そうなると、業務委託にまつわるサプライチェーンを強化する以前の問題として、いま現在の弱い部分をもう少し対策する必要があるでしょう。攻撃は今後も激化するでしょうから、以前本連載でとりあげた「基礎を固めよ」に加え、もう一つの対策としてこの調査報告書が示唆しているのが「サイバー保険」です。
経済産業省が公開している「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」においても、指示4サイバーセキュリティリスクの把握とリスク対応に関する計画の策定にてリスク移転策の一つとして、サイバー保険が提案されています。今回の調査ではサイバー保険の加入率が低いのではないか、という仮説のもと、加入状況を問う設問がありました。その結果はやはり、仮説の通りでした。
サイバー保険に加入している率が低い理由として、この調査結果では「サイバー保険に加入する効果が分からない」「サイバー保険への加入を検討できるほど、情報セキュリティに関する情報を整理できていない」などが挙げられています。ヒアリング結果では「サイバー保険で補償される金額が実際に必要な金額にマッチしないと考えている。サイバー保険の保険料を支払うくらいなら、セキュリティ対策に投資したい」というコメントも大変気になります。
リスクをリスクのまま放置すべきではない
サイバー保険はまだ歴史も浅く、確かにその効果が見えないというのが本音かもしれません。しかし、先の業務委託契約書にあいまいさを残したいというのが変えられないのであれば、サプライチェーンに残るリスクを低減するか、回避するか、移転するか、その全てを行う必要があります。その一つとしてサイバー保険がありますので、これを検討すべきタイミングなのかもしれません。以前とある有名企業の情報漏えい事故のいきさつを聞いたときには、サイバー保険が有効に機能した、とのことでした。こういった事例はあまり表に出てこないことも、浸透が進まない一つの理由なのかもしれません。
もちろん、セキュリティ対策に投資をするというのも間違いではありません。しかし、投資が形になるのは時間がかかります。サイバー攻撃の脅威は明日にでも、あなたの組織に降りかかってくるかもしれません。そうなると、即効性の高いリスク回避策が必要です。サイバー保険は事後の対策にはなりますが、こういった対策があることで、じっくりとセキュリティを考える時間を確保できると考えれば、検討に値するものになるかもしれません。(次回に続く)
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
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著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!<漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ>』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる本です。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さまに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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