宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(35)
製造業も狙われる「サプライチェーン攻撃」はどう対策すべき?(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届け! 今回は「情報セキュリティ10大脅威 2019」の中から“サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃の高まり”について掘り下げます。
「情報セキュリティ10大脅威 2019」で注目すべき脅威とは?
2019年3月、毎年恒例の「情報セキュリティ10大脅威 2019」が公開されました。2018年に発生し、社会的にも大きな影響を与えた情報セキュリティ事案から、情報処理推進機構(IPA)が選出し、120人のメンバーが審議した結果です。
10大脅威の2019年版はこのような結果になりました(図1)。個人的にも順当な内容だと思います。
さて、今回注目したいのは赤枠で記した、組織の脅威トップテンとして第4位に浮上した「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃の高まり」です。さて、皆さんはこの文言から、内容を正しく理解、把握できますでしょうか? 実は私もピンとこないので、今回はこれを少々掘り下げていくことにします。
「サプライチェーン」の弱点とは?
今回、この項目が第4位に急浮上した点に関して、IPAは以下のように述べています。
企業や組織では、サービスやソフトウェアを提供するための調達、開発、運用などの一連の流れ(サプライチェーン)の中で、一部の工程や業務を別企業や子会社などに委託しているケースがある。組織を狙った攻撃では、セキュリティ対策が弱いところを狙うのが常とう手段であり、昨今は、サプライチェーン内でセキュリティ対策が弱く、委託元からのガバナンスを効かせにくい委託先の企業が狙われている。そのため、「情報セキュリティ10大脅威 2019」では「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃の高まり」を新しい脅威候補とし、投票の結果、組織4位にランクインした。 ⇒「情報セキュリティ10大脅威 2019」8ページより
これによると、サービスやソフトウェアの開発に関して、別企業や子会社にその業務を委託している場合、納品物の中に脅威が含まれる可能性がある、ということが、今回表面化したリスクといえます。これは単なる不具合、バグといったものではなく、“マルウェアや脆弱(ぜいじゃく)性が入り込んでいる”と読み取れます。今回発表された10大脅威の詳細においても、
例えば、委託先組織に個人情報などの重要情報を扱うWebサイトの運用管理を委託している場合、委託先が不正アクセスを受けることで、その情報が漏えいする恐れがある。また、ソフトウェア開発を委託している場合、セキュリティに配慮した開発が行われないと、脆弱性を含むソフトウェアが納品され、ソフトウェア利用者が脆弱性を突いた攻撃を受ける。⇒「情報セキュリティ10大脅威 2019」より
という文言がありますので、脆弱性が情報漏えいを引き起こすことも含まれています。同じくIPAが2018年3月に公開した「ITサプライチェーンの業務委託におけるセキュリティインシデント及びマネジメントに関する調査」においても、製造業の71.1%が「実施すべき情報セキュリティ対策を仕様書などで委託先に明示していない」という結果が出ており、サプライチェーン攻撃が成立してしまう要因の1つとなっています。
しかし、「セキュリティ対策を仕様書で委託先に明示する」というのはなかなか難しい話です。情報セキュリティ10大脅威 2019や上記調査報告書においても「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」を参照していますのでその内容を見てみると、サプライチェーン攻撃対策の例として、以下のようなものが挙げられています。
- 系列企業やサプライチェーンのビジネスパートナーやシステム管理の委託先などのサイバーセキュリティ対策の内容を明確にした上で契約を交わす
- 系列企業、サプライチェーンのビジネスパートナーやシステム管理の委託先などのサイバーセキュリティ対策状況(監査を含む)の報告を受け、把握する
- 個人情報や技術情報などの重要な情報を委託先に預ける場合は、委託先の経営状況なども踏まえて、情報の安全性の確保が可能であるかどうかを定期的に確認する
- 系列企業、サプライチェーンのビジネスパートナーやシステム管理の委託先などがSECURITY ACTIONを実施していることを確認する。なお、ISMSなどのセキュリティマネジメント認証を取得していることがより望ましい
- 緊急時に備え、委託先に起因する被害に対するリスクマネーの確保として、委託先がサイバー保険に加入していることが望ましい
⇒ 「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 2.0」 3.4.サプライチェーンセキュリティ対策の推進より
……いかがでしょうか。これ、何となく分かったようで、分かりませんよね。サプライチェーン攻撃は目の前に迫っていながら、自分たちが安全だという証しを持ってこいだの、契約を交わせだのと精神論に近い対策に見えてしまいます。世の中にはこれぞ! という“サプライチェーン攻撃対策”は存在しないのでしょうか?
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