IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(8)
現場から見た画像処理の将来像(2/2 ページ)
AIメーカーとHALCONとの違い
筆者 最近は、さまざまな企業がAIを活用した画像処理システムを提供しています。新光電気でもさまざまなディープラーニングサービスを評価されたと思いますが、HALCONとAIメーカーとの違いについてはどのようにお考えでしょうか。
高橋氏 第3次AIブームに乗って、多くの企業がAIを検討していますし、私自身もAI活用を検討しています。しかし、課題解決をAIメーカーに丸投げする場合、自社の情報が含まれた画像をAIメーカーに提供することになりますし、それにより成果が得られたとしても、そこにたどり着くまでのAI活用ノウハウは自社に蓄積できません。テーマが変われば、AIメーカーに再度大きな投資をすることとなります。それに対して一から全てを自社で開発するとなると、それだけ大きな開発力を持つことが可能なのは大企業などのごく一部に限られると思います。
筆者 なぜそのように思われたのでしょうか。
高橋氏 私たちも、技術者をGoogleのTensorFlowなどに代表されるオープンソースのセミナーなどに参加させたことがあります。そこで、多少の技術は身に付きましたが、HALCONと比較し、その精度に追い付くまでにかかる時間と労力を考えると、そういったことができる企業は限られると思います。そこで当社は、ディープラーニング機能はライブラリとして提供されているHALCONを選択することとしました。従来手法の画像処理機能とのマッチング(相性)も非常に良好ですし、やがてAIブームが落ち着き、多数乱立したAIメーカーが淘汰(とうた)されるであろうときにも、画像処理ユーザーに多く活用されているHALCONは勝ち残る可能性が大きいと判断しました。
筆者 なぜAIメーカーが淘汰されるとお考えなのですか。
高橋氏 AIメーカーであれば、求められる画像を送り、分類結果を提供してもらうまでに数百万円から数千万円かかります。日本の製造業は少量多品種が多いため、分類に当てはまらないものが追加されれば、同じことを繰り返すことになります。各企業ともAIを活用し始めるために、1回はその工程を踏むことになるとは思いますが、リピートすることはないと思います。さらに言えば、製品の良品、不良という企業の生々しい部分をメーカーに渡すのは、極力、避けたいと考えるはずです。だからこそ、最近のAIブームはいずれ終わりを迎え、メーカーは淘汰されていくのではないでしょうか。HALCONを活用した実績が増えていくことで進化、深化、新化が加速され、そこにAIの真価が生まれてくると思っています。
ディープラーニングに対する今後の期待
筆者 今後のディープラーニングに、どのようなことを期待されますか。
高橋氏 当社の検査工程で求められる分解能は非常に高く、不良もランダムな箇所で発生しますので、背景状況もさまざまです。こういったものに適用するための学習は非常に難しく、前処理で工夫するか、高解像度カメラで撮像した巨大な画像にも対応できるようにする、といった工夫が必要になります。また、多品種少量生産が多い現場では、製品切り替え時の学習スピードを速める工夫も必要です。ディープラーニングによるデータ生成手法の一つであるGANは予期せぬことを学習させるリスクもあるので、現時点では学習データはできるだけ生画像を使うことから着手したいと思っています。
今後、ある代表品種で得られた不良の特徴を、違う品種の良品画像と足し合わせることで違う品種の不良画像が生成される、といった使い勝手の良い機能が出てくることを期待しています。
筆者 画像処理の将来については、どのようにお考えですか。
高橋氏 3次元計測は重要なポイントだと思います。今までは、3次元計測を行う際、専用の計測装置メーカーに頼っていました。それが3~4年前から手頃で性能の良い3次元計測ユニットが市場に現れ、最近では2次元画像処理と3次元計測ユニットを組み合わせて運用する機会が増えてきました。高精度な3次元計測のハードルが下がり、徐々に2次元から3次元という流れに進んでいるのは間違いないと思います。
現状、HALCONを用いた当社の検査装置の性能は高く、効率良く全数検査ができています。今後、Verify工程において、ディープラーニング、3次元計測、マルチスペクトルといった、新たな切り口の検査機能を組み合わせていけば、さらに自動化の領域が広がっていくと考えています。
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IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
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