業務に適した3D CADをレーダーチャートで探る(3)
「Fusion 360」を6つの視点で徹底評価する(1/2 ページ)
「機能性」「コスト性」「操作性」「連携性」「効率性」「運用性」の6つのポイントでレーダーチャートを作成し、3D CAD製品を評価する連載。今回はオートデスクが提供するクラウドベースの3次元設計開発プラットフォーム「Fusion 360」を取り上げます。
Fusion 360とは?
「Fusion 360」の登場は、2013年と比較的最近です。当時は英語版のみのリリースで、「Inventor Fusion」と呼ばれていた時期もありました。2015年の秋に待望の日本語化を果たし、個人や学生を中心に一気に普及し、最近ではCAEやCAMの機能も搭載されたことから企業での活用も進んでいます。
ちなみに“360”の呼び方ですが、「スリーシックスティー」が世界共通の呼び名で正式なものですが、日本では「サンロクマル」と呼ぶ人も多くいらっしゃいます。機械系の3D CADではありますが、デザイン系や建築系など、製造業以外のさまざまな分野で活用されています。また3D CADとしては珍しく、OSが「Windows」と「macOS」の両方に対応しているのも特長です。
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Fusion 360誕生の背景には、オートデスクが提唱している「The Future of Making Things-創造の未来-」という考え方があり、Fusion 360の公式サイトには「ものづくりは変わった。ツールも変えよう」と大きく書かれています。オートデスクは未来のモノづくりプラットフォームとして「Fusion」を中心に据え、製品開発に必要な全てのプロセスをクラウド上のプラットフォームでつなぎ、1つのツールでデザイン、テスト、ファブリケーションを実現。そして、これらの作業をいつでも、どこからでも行え、誰とでもコラボレーションできる環境を提供しています。
いざ、Fusion 360を分析!
それでは、連載第1回で紹介した6つのポイントに合わせて、Fusion 360の特長を細かくチェックしてみましょう。
6つのポイントとは、
- 機能性
- コスト性
- 操作性
- 連携性
- 効率性
- 運用性
でしたね。そして、1.機能性の部分をさらに細かく分割して
(1)モデリング(曲面以外)
(2)モデリング(曲面)
(3)アセンブリ
(4)図面
(5)検査
(6)変更・修正
のレーダーチャートを作成しました。
まずは、1.機能性についてです。(1)モデリング(曲面以外)に関しては、スケッチ機能が分かりやすく充実していますし、立体を作成する機能も一般的な押し出し、回転、スイープ、ロフトなどの機能がそろっています。フィレット、面取り、勾配機能もあり、基本的な形状を作成するには十分です。筆者が使い始めた2016年当時は、コマンド一つ一つの細かい設定があまりできませんでしたが、日々のアップデートにより設定できるようになってきました。
(2)モデリング(曲面)については、ソリッド、サーフェス(パッチ)モデリング機能の他に、特長的な機能としてスカルプト(T-スプライン)機能があります。筆者が初めてこの機能を使ったときは衝撃的でした。CGソフトのように粘土をこねるような感覚で面を引っ張ったり、押したりして曲面を作成できます。機械設計においてもグリップなど人が握ったり、触れたりする部分の面を作る際には非常に便利です。他にも3Dスキャンなどで得たメッシュデータを取り扱うことが可能で、メッシュにフィットした面の作成などが行えます。Fusion 360は、4つの3Dモデル形式を扱える“ハイブリッドモデラー”といえます。2017年にはシートメタル機能も搭載され、基本的な曲げの板金設計ができるようになりました。
(3)アセンブリに関しては、ジョイントという機能を用いて部品と部品との関係性を定義できます。カムやギアなどといった機械設計専用の機能はありませんが、回転機構、スライド機構などの基本的な機構の組み合わせによる動きの確認は可能です。アニメーション機能を使って分解図、組み立て図の検討と動画の作成が行えます。
(4)図面機能に関しては、作成したモデル、アセンブリを投影して図面を容易に作ることが可能です。断面図、詳細図も作成可能で、寸法定義や寸法公差、幾何公差、面の指示記号を付加できます。アセンブリの図面作成の場合、分解図の投影、バルーン、部品表の自動作成が行えます。残念な点としては、JIS規格に対応していないことと、線種や色の変更ができないことです。図面上に中心線は作成できるものの自由に線や点を作図できないため、作成したい場合は「AutoCAD」などの2D CADへデータを変換して持っていき、図面を作る必要があります。
(5)検査機能に関しては、3Dモデルの断面を切って確認できますし、干渉チェック、抜き勾配、曲率チェック、重心、質量など、設計で確認したい基本的な項目を検査できます。筆者の要望としては、抜き勾配、曲率チェックが検索範囲の値を入力して色で確認できるのはありがたいのですが、一つ一つの面にマウスを乗せて細かく値をタイムリーに確認できると便利だと感じています。
(6)変更・修正に関してですが、3Dモデルの修正がアセンブリ、図面に自動で反映されるため、関連しているデータの修正忘れは発生しません。Fusion 360は「パラメトリックモデリング」と「ダイレクトモデリング」の2種類に対応しています。パラメトリックモデリングの場合には、モデルを作成した履歴が記録され、行った作業をさかのぼって形状を修正できます。ダイレクトモデリングは作業した履歴は保存されず、修正したい箇所を直感的に選択して修正を行います。パラメトリックモデリングでもダイレクトモデリングのように形状を修正する機能が付いているため、2つの方法をうまく併用することで形状の変更、修正がスムーズに行えます。
2.コスト性についてですが、これほどの機能を持った3D CADが年間6万480円(税込み)で使用できます。これには本当に驚きました。3D CADといったら100万円くらいするのが一般的です。それが買い取りタイプではなく、サブスクリプションタイプにはなりますが、年間10万円以下で利用できるのです。これまで高価な3D CADに手を出せなかった中小企業や個人の設計屋さんでも導入して使用することが可能です。また、学生や個人の非営利目的での使用はなんと無料です。一部の機能を除いて同じように使うことができます。
3.操作性についてですが、筆者が初めてFusion 360を使ったときに感じたのが、「メニューが分かりやすくて使いやすい!」でした。これまで他の3D CADを使っていた経験があるというのもありますが、ある程度の形状はすぐに作れるようになりました。他の3D CADを使ったことがある人なら、わずかな学習で使えるようになると思います。新しくできた3D CADソフトということもあり、昔ながらの操作画面ではなく、とてもシンプルで分かりやすい操作画面になっており、直感的に使えるのがとても気に入っています。
4.連携性についてですが、筆者が“仕事で使える”と思った一番の理由として、データの互換性の良さがありました。無償もしくは安価な3D CADの場合、読み込みや出力のデータ形式が制限されている場合がほとんどでしたが、Fusion 360はさまざまな他の3D CADのデータをインポートしたり、エクスポートしたりすることができます。
他のソフトとのデータの受け渡しが可能なため、仕事で他の部署や社外の人たちと一緒に連携して作業が行えます。その他にも、Fusion 360の開発元であるオートデスクの他製品との連携もボタン1つで行うことができます。最近では電子回路/プリント基板CADの「EAGLE」との連携やビジュアルプログラミングツールである「Dynamo」との連携が注目されています。APIが公開されているため、「Autodesk App Store」から、スマートフォンにアプリをダウンロードして機能を拡張するのと同じように、サードパーティー製のFusion 360向け拡張プラグインをインストールできます。無料から有料のものまで、さまざまあります。その他、3Dプリンタへのデータ転送機能や日本のメーカーではありませんが、ボルトやナットなどを販売しているメーカーの3Dデータをワンクリックで取り込んだり、作成した3Dデータの製作をオンラインで依頼ができるボタンも付いていたりなど、設計から製作までの一連の流れがサポートされています。
5.効率性についてですが、コマンドへのアクセスがマウスの右クリックからできたり、ショートカットキーの割り当てが可能だったり、よく使うコマンドを登録して「S」キーから呼び出したりできるなど、作業の効率化を図る機能が搭載されています。操作のレスポンスについても、それほどハイスペックなPCでなくても動かすことができます。ただし、大規模なアセンブリ、部品点数が数千点を超えてくるとレスポンスが遅くなり、Fusion 360では厳しいといわれています。
6.運用性についてですが、Fusion 360の特長としてクラウドベースの3D CADソフトであるということが挙げられます。作成したデータがクラウドで管理され、データを作成したPC以外からでも自分のアカウントでログインすることで、データにアクセスでき、確認や修正が行えます。また、他の人とのデータ共有も容易にできることから、チーム設計をする上で非常に便利です。Fusion 360がインストールされていないPCでも、Webブラウザやスマートフォンやタブレット端末などからデータを確認したり、ダウンロードしたりできます。もちろん、他の人とデータ共有するには設定が必要ですし、パスワードを入力しないと見られないようにすることも可能です。ログインする際の2段階認証機能も付いており、セキュリティ面もしっかりしています。
データを間違って上書き保存した場合でも、古いバージョンがきちんとクラウドに保存されているため、古いバージョンに戻すことも可能です。ソフトのアップデートが6~8週間に1度のペースで行われ、常に機能が強化、改善されています。バグなどがあった場合には、すぐに修正のアップデートが入るので安心です。Fusion 360を起動し、インターネットにつながることで強制的にアップデートが行われるため、バージョン違いによりデータが開けない……といったトラブルも回避できます。
さらに、操作で分からないことがあった場合などは、公式の日本語コミュニティーサイトがあり、投稿することでエキスパートたちが無料で回答してくれます。また、ユーザーが追加して欲しい機能を要望できるサイトも用意されています。
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業務に適した3D CADをレーダーチャートで探る
3D CADソフトの選定を行う際、皆さんはどのような基準で評価を行っているだろうか。本連載では、3D CADをどのようなポイントで選べばよいか? さまざまな3D CADソフトや機能を紹介しながら、レーダーチャートでその特性や機能性を評価する。
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