IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題(4)
完全な答えのないIoTセキュリティの世界、最後はやはり……(1/3 ページ)
工場や重要インフラで利用されつつある「インダストリアルIoT(IIoT)」の世界に着目し、IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題について解説する本連載。第4回(最終回)では、リスクの考え方の理解を深めると同時に、IoTセキュリティを検討する上で必要な心構えについて解説する。
早いもので、とうとう連載も最終回となった。都合上記事のタイトルには「IoT」という言葉を使っているが、IoTという言葉はそろそろ引退すべきだと考えている。ともあれ、「インダストリアルIoT(Industrial IoT:IIoT)」のように業種などを限定することで、発散しがちでつかみ所のないIoTを少しだけ分かりやすくしてくれると思うし、今後はより分かりやすい名称で呼ばれることになっていくのだろうと期待している。
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リスクの考え方
大変残念なことに、ITを利用していてもそうでなくても、ビジネスには“リスク”が付き物である。それがIIoTのように、さまざまなモノがITでつながってしまうことで常に攻撃者や犯罪者は優位に事を進めることができる。これは攻撃面が拡大することによるもので、拡大し複雑になったシステムは守る側にとっては都合が悪い。
例えば、一般的な家屋と東京ドームとでは、どちらの警備が大変か? ということに置き換えることができる。必要な警備員の人員で考えてみると、通常の一軒家であれば警備員が6人いれば24時間交代勤務で警備できるが、東京ドームではそうはいかない。家屋の床面積を100m2とすると、東京ドームの建築面積は4万7000m2なので単純面積比で470倍となる。
つまり、複数の別々のシステムがネットワークでつながった、IIoTのような大きなシステムを守るためには「それなりの投資が必要だ」ということである。もちろん100%事故や事件が発生しない状況を実現するのは相当困難だと思われる。
お金をかけたらできること、時間や人員を割けばできることはあるものの、実現できないことが多いのである。ただ、できないことばかりを並べていても困ってしまうだけなので、今回はIIoTのリスクについてあらためて考えるきっかけを提供できればと思う。
さて、産業システムにおけるリスクを評価する「リスクアセスメント(Risk Assessment)」の手法について列挙してもよいが、ここでは制御システムやITといった技術から一度離れて、“ビジネス上のリスク”について考えることにしよう。なぜならば、技術的なリスクであれ、地政学上のリスクであれ、企業が直面するリスクはビジネスの観点から扱われるべきだからである。
では最初に、国際標準の「ISO/IEC Guide 51:2014(JIS Z 8051:2015)」での定義について確認してみようと思う。この国際標準において“Risk/リスク”とは、“Combination of the probability of occurrence of harm and the severity of that harm/危害の発生確率およびその危害の度合いの組み合わせ”と定義されている。さらに“Harm/危害”については、“injury or damage to the health of people,or damage to property or the environment/人への傷害もしくは健康障害、または財産および環境への損害”と記されている。「リスク=危害の発生確率×危害の度合い」という式で表すこともできるが、危害そのものは発生しなければリスクと呼べず、実際はどのような種類の危害が起こり得るか的確に把握できていないと「想定外」のリスクに直面して、慌てふためくことになる。
中小企業庁が発行する中小企業向けリスクマネジメントのホワイトペーパーを眺めてみると、リスクについて次のように分類している(表1)。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 事業機会に関するリスク | ・新事業分野への進出にかかるリスク(新たな事業分野への進出の成否など) ・設備投資にかかるリスク(投資規模の適否など) ・商品開発戦略にかかるリスク(新機種開発の成否など) ・資金調達戦略にかかるリスク(増資または社債、借入などの成否や調達コストなど) |
| 事業活動の遂行に関するリスク | ・モノ、環境などに関する災害リスク(地震、不適切な工場廃液処理など) ・情報システムに関するリスク(セキュリティの不具合による情報漏えいなど) ・商品の品質に関するリスク(不良品の発生・流通など) ・コンプライアンスに関するリスク(法令違反など) ・財務報告に関するリスク(粉飾決算など) |
| 表1 企業の経営活動におけるリスクの具体例(出典:中小企業庁) | |
また、「リスク」に関する過去記事を参照してみると、次のように代表的なリスクを列挙してくれている。
いずれもビジネス上で考慮すべきリスクについて述べており、ITやサイバーセキュリティと関連する直接的なリスクは“リスク全体の一部である”ということになる。だが実際のところ、IT/サイバーセキュリティの侵害を受けることによって、その他のリスクに影響を及ぼすケースも考えられる。その事例を幾つか紹介しよう。
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IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題
デジタル(サイバー)世界と現実世界を橋渡しする「IoT(Internet of Things)」の仕組み。その可能性や利便性についての話題は尽きないが、IoTのセキュリティリスクに関してもしっかりと情報収集し、対策を講じるべきである。本連載では、工場や重要インフラで利用されつつある「インダストリアルIoT(IIoT)」の世界に着目し、IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題について解説する。
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