IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題(3)
想像してみよう、もしもIIoTの世界でセキュリティ対策をしなかったら?(3/4 ページ)
(セキュリティ監査のための)ログ収集:
ここが一番重要だが、完備されている環境は少ないと思われる。各端末におけるシステム上の振る舞いのログと、ネットワークでのやりとりのログが両方必要となるが、“(セキュリティ監査のための)”としているのには意図がある。「セキュリティのための投資」には、まだ首を縦に振らないかもしれないが、別の目的であれば予算化が可能なのではないかと思うからである。
“運転に関わる操作全て”を記録することで、何か問題が発生した際に、原因となった操作や動作、データなどを時系列で振り返ることができれば、即座に次の手を打つことができる。
人間が操作した結果、何らかの問題が発生した場合、直接的な原因なのか、たまたまなのか、因果関係を調べるためには一連の操作や動作、それらで使用されたデータやパラメータを検証する必要がある。
制御システムの記録可能なやりとりや操作、動作、関連するデータなどを時系列で記録できれば、加工データが工程を初期化する際の手続きと、別の工程においてHMIで特定のデータや操作に伴う指示で、対象となるPLCのメモリブロックの割り当てを間違っていたが、たまたま動作していた……ということが見えてくるかもしれない。
この手の仕組みは、多くのベンダーが提供を始めている。例えば、スイスのNozomi Networksの「SCADAguardian」、オランダのSecurityMatters、イスラエルのSCADAfence、ロシアのKasperskyの「KICS」などだ。いずれもSCADAと他の制御機器との通信を監視しログを取るのだが、Kasperskyの製品はWindowsで動作する端末のログも取得して一元管理できる。
アクセス制御&認証制御:
これは、2つの意味があることを常に意識する必要がある。物理的な、そして電子的なアクセス制御や認証で、前者はバッジや鍵などで入ることのできる工場やプラントの区域を制御することだ。例えば、工場の正門でも通用門でも入館手続きなしに入ることはできないように運用していると思う。そうでない工場があることは言うまでもないが、それは「まだ」必要だと思っていないからだ。
同様に、電子的なアクセス制御とは、人(つまりアカウント)だけではなく、“端末をネットワークにつなぐ”ということも含まれる。これは、外部から持ち込まれるPCなどを経由しての感染が多いこととも関連して対処する必要がある。ということは、“検疫の仕組み”が必要ということである。
パッチと脆弱(ぜいじゃく)性管理:
これは、ITの世界では当たり前かもしれない。しかし、パッチを当てたがためにアプリケーションが起動しなくなるということは往々にして起こり得るので、事前に同じ環境でパッチの適用に伴う動作異常などについて検査する手順を定めておく必要があるだろう。
ペネトレーションテスト:
そして、ログを取ることと同様に重要なのは、保護対象のシステム、ラインや工場全体がどのような弱点を持っていて、どのような対策が必要なのかを知ることである。
これは脆弱性を知るだけでなく、想定される攻撃の手順をあらかじめ把握し、もしもサイバー攻撃を受けた場合にどのようなことが起こり、どういった対処をしなければならないか、また、限られた予算でどのような防御対策を取るか、検討するために必要な情報であり、これを得るためには「アセスメント」あるいは「ペネトレーションテスト」を利用する必要がある。
よく言う孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」を実現するためには、まず己を知らねばならないということである。
従業員とベンダーのトレーニング:
ITに詳しい従業員やベンダーと、それ以外とを分けて扱う必要がある。専門知識のないメンバーに対して、どのように効果的にモチベーションを持って知識を得るように仕向けるかは、サイバーセキュリティの話題でなくとも常に問題だろう。そのためにゲーミフィケーションに基づいて没入体験を伴って効果的にモチベーションを高めるトレーニングが増えてきている。
日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)では、カードゲームなどでサイバーセキュリティを学ぶことのできるプログラムを提供している。Kasperskyは短時間でサイバー攻撃を体験する「KIPS」を、PwCは攻撃側と防御側とに別れて行う高度なサイバー演習を展開している。また、より高度で大規模なプログラムとして、NICT(情報通信研究機構)もナショナルサイバートレーニングセンターを運営し提供している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題
デジタル(サイバー)世界と現実世界を橋渡しする「IoT(Internet of Things)」の仕組み。その可能性や利便性についての話題は尽きないが、IoTのセキュリティリスクに関してもしっかりと情報収集し、対策を講じるべきである。本連載では、工場や重要インフラで利用されつつある「インダストリアルIoT(IIoT)」の世界に着目し、IoTセキュリティの現実的な仕組みと課題について解説する。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー